従業員・元従業員から労働審判を申立てられると、会社には様々な面でダメージがあります。
具体的には、金銭支払いを強いられる、対応に人手を割かれる、他の従業員に影響が及ぶといった点がダメージになります。少しでもダメージを軽減するためには、入念に準備する、早期解決を目指すなどの対応が不可欠です。
今回は、労働審判が会社に与えるダメージや、ダメージを軽くする方法について解説しています。労働審判を申立てられた会社の経営者や人事・労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
労働審判を申立てられると、結果的に多額の支出を強いられる可能性が高いです。
労働審判の対象になりやすい類型としては、解雇無効や残業代をめぐる争いが挙げられます。無効な解雇をしていれば、雇用状態が継続している形になるため、それまでの賃金(バックペイ)を支払わなければなりません。また、残業代紛争では未払い残業代があれば支払いが必要です。
もし会社の対応に法的問題がなかったとしても、労働審判は一般的に弁護士をつける必要性が高く、弁護士費用が発生します。
労働審判を申立てられると、多くのケースで百万円単位の出費が発生すると想定されます。
労働審判に対応するために、会社は多くの時間や手間をかけなければなりません。
申立書が届いてから初回期日までの時間は限られています。証拠収集のために、急いで資料の精査や関係者への事情聴取などを行う必要があります。主張をまとめた答弁書の作成も不可欠です。答弁書を提出したうえで、期日当日には会社関係者が出席しなければなりません。
労働審判の準備や出席に時間をとられると、通常業務に支障が出るおそれもあるでしょう。
労働審判への対応に時間を割かれると、関係する従業員の負担感が増します。直接関係しない従業員であっても、紛争状態にある会社に嫌気が指し、モチベーションが下がるおそれがあります。
最悪の場合、離職者が発生してしまうかもしれません。トラブルの存在が社外に知れ渡り「ブラック企業」とのレッテルを貼られると、採用活動が難しくなる可能性もあります。
また、申立てに触発されて、他の従業員も声をあげるケースがあります。特に残業代トラブルにおいては、「自分にも未払い残業代がある」として紛争が拡大するリスクが高いです。
労働審判の影響が他の従業員にも及び、結果的に会社全体に問題が生じる事態もあり得ます。
まずは、期日に向けて入念に準備しましょう。労働審判では第1回期日までに裁判所側が心証を固めるため、事前準備が非常に重要です。十分な準備をして裁判所を味方につければ、会社にとって有利な結論になりやすいです。
事前準備としては、証拠の収集・精査をして事実関係を確認したうえで、会社の主張を漏れなく説得的に示した答弁書を作成します。必ず期限までに提出してください。
入念に準備した成果が出て裁判官や労働審判員の心証がよくなれば、調停案や労働審判の内容が会社に有利になり、労働者への支払額を抑えられます。
労働審判の答弁書について詳しくは、以下の記事を参照してください。
参考記事:労働審判の答弁書の書き方|提出期限に間に合わないとどうなる?
支払額を抑えるためには、早期解決を目指すのも有効です。
労働審判で解決できず訴訟にもつれこむと、争いが長引いてしまいます。解雇無効のときにはバックペイが膨らみますし、残業代紛争でも遅延損害金の額は大きくなります。残業代に関しては、労働審判では認められない付加金の支払いが、訴訟になると命じられるリスクもあります。
もちろん、納得できないのであれば、無理に早期解決する義務はありません。しかし、結果的に労働者の主張が認められそうなケースでは、早めに解決した方が金銭的負担を軽減できます。
紛争が長引けば、時間的負担や精神的なストレスも大きいです。無理に会社の主張を通そうとするのではなく、ある程度妥協して争いを終わらせた方がよいケースもあります。
他の従業員への紛争の波及を防ぐには、秘密保持を約束するのがひとつの方法です。
労働審判を申立てた労働者は、他の従業員に話をして、会社への請求をするよう促すおそれがあります。特に残業代トラブルではリスクが高いです。
調停案に秘密保持条項を入れることで、紛争が拡大するリスクを軽減できます。
次なる申立てを防ぐには、社内体制の見直しも欠かせません。
トラブルが発生している以上、会社の側にも何らかの問題が存在している可能性が高いです。長い目でみれば、就業規則や勤怠管理などの見直しを通じて、今後の紛争を防ぐのも重要になります。
労働審判によるダメージを減らすには、弁護士への依頼が特に効果的です。
弁護士がつけば、証拠収集、答弁書の作成、期日当日のやりとりなどでサポートを受けられ、有利な結論になる可能性を高められます。すべて社内で行うのと比べると、割かれる時間を削減する効果も高いです。
また、終結させる際には、落としどころや必要な条項を踏まえてやりとりができます。紛争が終わった後は、社内体制の整備を通じて、原因となった問題の根本的な解決も可能です。
たしかに、弁護士に依頼すれば費用はかかってしまいます。しかし、労働審判によるダメージを減らせる点を考慮すると、トータルでは依頼した方が得になるはずです。実際に、労働審判では大半のケースで弁護士がついています(参考:労働審判事件の代理人選任状況(地裁)|日本弁護士連合会)。
ここまで、労働審判による会社のダメージや、ダメージを軽減する方法について解説してきました。
労働審判では、会社は金銭支払いを強いられる、時間をとられる、他の従業員にも影響が及ぶといったダメージを受けます。ダメージをなくす・減らすためには、入念に準備したうえで早期解決を模索するなどの対応が重要です。会社だけで悩まずに、弁護士の力を借りましょう。
労働審判を申立てられてお困りの方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。ご依頼いただいた際には、証拠収集、答弁書の作成、期日への同行など、全面的にサポートいたします。
「労働審判によるダメージを減らしたい」とお考えの会社関係者の方は、お早めに弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。