雇止めとは、期間の定めのある労働契約を、期間満了により終了させることです。会社にとって、経費削減などのために必要な手段です。
しかし、雇止めには法的規制が存在します。法律上の要件を満たしていないのに強行すれば、多額の金銭支払いを強いられる結果となりかねません。解雇と同様に、慎重に行うようにしてください。
今回は、雇止めについて、解雇との違いや有効要件、必要な手続きなどを解説しています。従業員の雇止めに関してお悩みの会社経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
雇止めとは、期間の定めがある労働契約を更新せずに、期間満了により終了させる行為です。
期間の定めがある労働契約を結んでいる従業員が、雇止めの対象になります。例としては、契約社員やアルバイト・パートなどが挙げられます。
企業にとって雇止めには、人件費を削減できる、問題社員を辞めさせられるといったメリットがあります。期間満了を理由として雇用関係を終了させれば、解雇よりも穏便にすませられるとも考えるかもしれません。
しかし、後述する通り、雇止めには解雇と似た法的規制が課されています。安易に雇止めをしてはなりません。
雇止めと解雇は、従業員との雇用関係を終了させる点で似ています。両者の違いは、解雇は労働契約の途中で一方的に契約を終了させるのに対して、雇止めは有期労働契約の期間満了に伴って契約を終了させる点です。
解雇は、主に期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を結んでいる労働者に対して行われます。期間の定めのある労働契約(有期労働契約)であっても期間中の解雇はあり得ますが、やむを得ない理由がないとできません(労働契約法17条)。無期雇用の労働者を解雇する以上にハードルは高いです。
雇止めは対象が有期雇用の労働者であり、期間満了に伴ってなされます。有期無期問わず契約の途中で行われる解雇とは別物であり、適用条文も異なります。
解雇について詳しくは、以下の記事をお読みください。
参考記事:解雇とは?種類やできるケースを会社側弁護士が解説
本来であれば、雇用契約上の期間が過ぎれば契約は当然に終了するはずです。しかし、雇用が続くと考えて生活を設計している労働者にとっては、契約を思いもよらぬ形で終了されると大きな不利益が生じます。
そこで判例上、雇止めを制限する「雇止め法理」が形成されてきました。判例の内容は、現在は労働契約法19条に明示されています。
労働契約法19条の中身は次の通りです。
条文だけ見てもわかりづらいかと思います。簡単に言えば、雇止め法理が適用されるのは以下のケースです。
まずは、過去に反復して更新されていて、事実上無期雇用と変わらない状態であるケースです(労働契約法19条1号)。
無期雇用と同視できるかは、反復更新の有無・程度や契約の更新管理が厳密になされているかといった観点から判断されます。繰り返し更新されていて、更新手続きが形骸化していたようなケースでは、無期雇用と変わらないといえます。
もう1つが、雇用継続を期待することについて合理的な理由があるケースです(労働契約法19条2号)。相当程度の反復更新の実績があるケースのほか、契約締結時の使用者の言動などから雇用継続を期待して当然といえるケースが該当します。
雇用継続への期待が合理的といえるかは、業務内容、更新回数や通算期間、他の労働者への過去の扱い、採用時や更新時の会社側の言動などから判断されます。
労働契約法19条1号・2号に該当する場合には、「客観的に合理的な理由」があり「社会通念上相当」であると認められない限り、雇止めはできません。
「客観的に合理的な理由があるか」「社会通念上相当といえるか」については、解雇のときと同様に判断されます。すなわち、従業員が抱える問題の内容・程度などが判断要素です。
ただし、無期の労働者と比べると雇用継続への期待を保護する必要性が薄いと考えられ、会社に有利な判断が下される場合もあります。たとえば、経営不振を理由として人員削減をする際には、整理解雇よりも雇止めの方がハードルは低くなり得ます。
3回以上更新されている、あるいは1年を超えて継続して雇用されている労働者について契約を更新しない場合には、少なくとも契約満了の30日前には予告してください(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準2条)。
該当しない労働者についても、トラブル防止の観点からは予告するのが望ましいです。
労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合には、遅滞なく交付しなければなりません(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準3条)。
書面に記載する理由は「契約期間の満了」以外である必要があります。
雇止めが無効である以上、契約は継続するため、復職を求められた際には認めざるを得ません。問題を抱えている従業員が復職すると、周囲に悪影響をもたらすリスクが高いです。
復職だけでなく、働いていなかった期間分の未払い賃金の支払いを強いられます。雇止めをした後も雇用が継続し、賃金が発生していることになるためです。
訴訟になり争いが長引いていると、支払い額が大きく膨らむ結果となります。
不当な雇止めをしたことを理由に、慰謝料を請求される可能性もあります。雇止め行為そのものが、労働者に精神的な苦痛を与えたと判断されたケースです。
慰謝料自体はさほど高額にならなくても、未払い賃金と合わせると相当な額となるおそれがあります。
ここまで、雇止めについて、解雇との違いや有効要件、必要な手続きなどについて解説してきました。
雇止めとは、期間の定めのある労働契約を、期間満了により終了させることです。解雇と似た法的規制が課されており、不当な雇止めをすれば復職や金銭支払いを強いられるリスクがあります。慎重に進めたうえで、トラブルが発生した際には迅速に対応しなければなりません。
従業員の雇止めについてお悩みの方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。ご相談いただければ、法律上雇止めができるか、どう進めればいいか、契約時の注意点は何かなどをアドバイスいたします。もちろん、既に争いに発展している場合には迅速に対応します。
「雇止めが法律上有効にできるかわからない」「雇止めした従業員とトラブルになっている」などとお悩みの会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。