「労働審判の流れがわからない」とお困りでしょうか?
労働審判は、労働関係の紛争を裁判所で迅速に解決する専門の手続きです。進行が早いため、流れを知っておかないと不利な結果となりかねません。とりわけ第1回期日までに十分な準備ができるかがポイントです。
今回は、労働審判の流れと会社が有利に進めるためのポイントを解説しています。従業員から労働審判を申し立てられた会社の経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
そもそも労働審判とは何かについては、以下の記事で解説しています。
参考記事:労働審判とは?メリット・デメリットや訴訟との違いを解説
労働審判は、当事者の申立てにより始まります(労働審判法5条1項)。申立ての際には、申立書を裁判所に提出しなければなりません(同条2項)。申立書には申立人の請求内容や理由などが記載されています。
法律上は会社からの申立ても可能です。とはいえ、実際には大半のケースで労働者から申立てられます。いきなり申立てがなされるよりも、事前に交渉があり、合意できなかった結果として申立てに至る場合が多いです。
申立てがなされると、裁判所は第1回期日の日時を指定します。第1回期日が開かれるのは、原則として申立てから40日以内です(労働審判規則13条)。
期日が指定されると、裁判所から呼出状と申立書・証拠書類の写しが送付されます。しっかりと読み、第1回期日の日程や答弁書の提出期限、相手方の主張を把握するようにしましょう。
呼出状や申立書を受け取ったら、すぐに準備に取り掛かってください。答弁書の提出期限は第1回期日の7~10日前程度に指定されるため、提出まで1ヶ月程度しかありません。
答弁書には会社の主張を余すところなく記載します。証拠を収集・精査したうえで、期限内に主張を書面にまとめなければなりません。スケジュールがタイトなので、迅速に進める必要があります。
答弁書について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
参考記事:労働審判の答弁書の書き方|提出期限に間に合わないとどうなる?
第1回期日は非常に重要です。労働審判は迅速に進行するため、第1回の段階で裁判所側が方向性を決めてしまいます。
労働審判は非公開です(労働審判法16条)。両当事者と双方の代理人(弁護士)、労働審判官(裁判官)1名、労働審判員(労働紛争の専門家)2名が出席します。場所は通常の法廷ではなく、会議室のような部屋です。
期日の場では、申立書・答弁書での主張や証拠に関して、まずは当事者に対して裁判所側から質問がなされます。代理人だけでなく当事者本人の出席・回答も必要です。
その後、一般的には双方が別々に呼び出され、話し合いでの解決(調停)の意向を確認されます。そのまま話し合いがまとまり、調停成立となるケースも多いです。いずれにしても、第1回期日で大まかな方向性が決まります。
第1回期日で話し合いがまとまらなかった場合、通常は数週間後に第2回期日が開かれます。第1回と同様に調停が試みられ、合意できれば調停成立となります。
第2回でも合意できなければ、第3回期日が指定されます。労働審判は原則として3回までです(労働審判法15条2項)。
労働審判の終わり方は主に以下の3つです。
● 調停成立
● 労働審判の告知
● 24条終了(労働審判に適さない事案の場合)
順に解説します。
期日で話し合いがまとまれば、調停成立です。合意内容が調書にまとめられ、調書は確定判決と同様に強制執行にも利用できます。
労働審判の7割程度が調停成立により終了しています。
話し合いがまとまらないときは、「労働審判」と呼ばれる判断がくだされます(労働審判法20条)。わかりやすくいえば、判決のようなものです。
審判に対して両当事者から異議がなければ、2週間で確定します(労働審判法21条)。
不服がある当事者が異議を申し立てれば、通常訴訟に移行します(労働審判法22条)。その後は、通常の裁判の流れに沿って審理が進められます。
例外的に、裁判所の判断により労働審判が終了するケースもあります(労働審判法24条)。たとえば、証拠が膨大で複雑な事案では、迅速に判断を下す労働審判には適さないとして終了させられる可能性があります。
労働審判法24条に基づいて終了した場合には、通常の訴訟に移行します。
前提として、第1回期日には必ず出席するようにしてください。呼出状で日程を確認したうえで、予定を開けておくようにしましょう。
誰が出席すべきかは場合によりますが、申立人の直属の上司など、問題となっている事実に詳しい人物が望ましいです。加えて、決定権限を持っている代表者等の出席も必要になります。
申立てを知ったら、すぐに準備に着手してください。繰り返している通り、労働審判は第1回期日までに方向性が決まるため、事前の準備が非常に重要です。
答弁書の提出までは1ヶ月程度しかありません。迅速に証拠を収集して主張をまとめ、答弁書を作成する必要があります。すぐにでも動き出すようにしましょう。
早めに準備するといっても、労働審判に慣れていない会社にとっては難しいかと思います。そこで、弁護士への依頼が有効です。
弁護士に依頼すれば、証拠収集や法的主張の整理、答弁書の作成までサポートしてもらえます。弁護士は代理人として期日にも同席できるため、不用意な発言により意図しない方向に進むのを防げます。
実際に、労働審判では弁護士をつけている企業が多いです(参考:労働審判事件の代理人選任状況(地裁)|日本弁護士連合会)。会社の負担を軽減しつつ有利な結論を導きやすくするため、弁護士への相談・依頼をご検討ください。
ここまで、労働審判の流れや有利に進めるポイントを解説してきました。
労働審判では第1回期日までに何をするかが非常に重要です。会社だけで対応するのは難しいかと思いますので、弁護士への依頼を検討しましょう。
従業員との労働審判に直面している方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。ご依頼いただいた際には証拠収集から答弁書の作成、期日への同席などで全面的にサポートいたします。
「労働審判を申し立てられた」とお困りの会社関係者の方は、お早めに弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。