ハラスメントには様々な種類がありますが、職場において特に問題になりやすいのがセクハラ・パワハラです。いずれも相手を嫌がらせる行為であり、社内環境を害します。
加害者だけでなく、十分な措置をとらなかった会社も法的責任を問われるおそれがあります。ハラスメントへの対策は不可欠です。
今回は、セクハラ・パワハラの定義、会社が問われる責任、とるべき対策などを解説しています。会社経営者や人事労務担当者の皆様には知っておいて欲しい内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
男女雇用機会均等法においては、セクハラとは、職場において行われる性的な言動であって、これに対する労働者の対応により労働条件に不利益を受けるもの(対価型)、または就業環境が害されるもの(環境型)とされています(男女雇用機会均等法11条1項)。簡単にいえば、相手の意思に反する性的な言動がセクハラです。
「職場」には、普段働いている場所だけでなく、出張先・取引先や移動中の車内、業務の延長と考えられる飲み会の場なども含まれます。労働者であれば、正社員・非正規といった雇用形態は問いません。「男性が加害者、女性が被害者」とのイメージをお持ちかもしれませんが、性別は問わず、異性間のみならず同性間でも該当し得ます。
例としては以下が挙げられます。
個々のケースでセクハラにあたるかを判断するにあたっては、行為を受けた側の意思が重視されます。ただし、一定の客観性は必要です。
セクハラは「対価型」と「環境型」に分類されます。
対価型とは、性的な言動への対応によって、解雇・降格・減給などの不利益を受けるものをいいます。たとえば、社長から性的関係を迫られて拒否したところ、解雇されたケースです。
環境型とは、性的な言動によって就業環境が不快なものとなり、働くうえで見過ごせないほどの支障が生じるものをいいます。たとえば、日々上司から身体を触られているために、仕事に集中できないようなケースです。
パワハラとは、職場において行われる、以下の①~③の要件をすべて満たす言動をいいます(労働施策総合推進法30条の2第1項)。「職場」の意味は、セクハラの場合と同様です。
①の「優越的な関係」とは、一般的には上司部下の関係です。ただし、同僚や部下からの行為でも、状況によってはパワハラに該当し得ます。
②にあたるのは、社会常識から見て明らかに業務上不要な行為、あるいは必要であっても度が過ぎた行為です。適切な方法で行われる指導は、パワハラではありません。
③は、言動の影響により働くうえで見過ごせないほどの支障が生じることです。判断にあたっては、平均的な労働者の感じ方を基準にします。受けた側が「パワハラだ」と感じても、必ずしもパワハラに該当するとは限りません。
パワハラは以下の6つの類型に分けられます(参考:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針|厚生労働省)。
これらはあくまで典型的なパターンです。他にも定義を満たす言動はパワハラに該当します。
ハラスメントをした加害者本人には不法行為が成立し、民事上の損害賠償義務を負います(民法709条)。さらに、加害者を雇用している会社にも「使用者責任」が発生します(民法715条)。したがって、被害者から会社に損害賠償請求がなされる可能性もあります。
会社は従業員に対して、生命・身体の安全を確保できるよう必要な配慮をすべき義務(安全配慮義務、労働契約法5条)や、快適な環境で就労できるよう職場環境を整える義務(職場環境配慮義務)を負っています。
これらは、会社と従業員との間の雇用契約に伴う義務です。したがって、義務に違反すると債務不履行責任が生じ、損害賠償請求の対象になります(民法415条)。
なお、「パワハラ防止法」により、パワハラ防止措置が2022年4月より中小企業にも義務づけられました。パワハラ防止法については、以下の記事をご覧ください。
参考記事:パワーハラスメント防止法の内容|パワハラ防止措置はどうする?
ハラスメントに該当する行為の内容や、ハラスメントをしてはならない旨の方針を明確にし、労働者に周知・啓発してください。具体的には、就業規則に規定し、社内報での周知、ハラスメント研修などを行いましょう。
ハラスメントに関する相談に応じられる体制を整備するのも不可欠です。
窓口の設置はもちろん、窓口の存在を従業員に伝え、利用しやすい状態にしておくのも重要になります。様々なルートで相談できるよう、社内のみならず、社外相談窓口の設置もご検討ください。
ハラスメントが発生した際には、事実確認をしたうえで対応をとらなければなりません。
加害者・被害者の双方に適切な措置をとります。状況に応じた配置転換や謝罪要求、加害者への懲戒処分、加害者の異動、被害者と加害者の引離し、被害者のメンタルヘルス不調へのケアなどが必要です。当事者への措置だけでなく、他の従業員への研修など、再発防止策もとりましょう。
ここまで、セクハラ・パワハラの定義や会社が問われる責任、とるべき対策などを解説してきました。
ハラスメントがあると、社内環境が悪化し、被害者はもちろん他の従業員にも影響が及びます。まずは起きないように事前対策をとり、万が一発生したときにも迅速に対応できるよう体制を整えておかなければなりません。
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