我が国では、リストラは整理解雇と同じ意味で用いられる場合が多いです。整理解雇以外にも、雇止め、希望退職者の募集など、人件費削減の方法は様々考えられます。
リストラにより会社収益は改善されますが、トラブルに発展する、従業員のモチベーションが低下するといったリスクも存在します。
今回は、リストラにより人件費を削減する方法やリスクについて解説しています。人件費削減を目指している会社経営者や担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
リストラは英語の「re-structuring」の略語であり、本来は組織再編、再構築といった意味を持ちます。人件費削減だけでなく、経費削減、不採算事業の売却、新規事業への投資など事業構造を変えるための行為全体を意味する言葉です。本来は必ずしもネガティブな言葉ではありません。
リストラ(事業の再構築)には様々な方法があり、人件費削減はリストラの手段のひとつです。詳しくは後述しますが、人件費削減の方法としては例えば以下が考えられます。
まずは解雇をイメージするかもしれませんが、人件費削減には様々な方法があります。
我が国では、リストラは人員削減の意味で用いられるケースが多いです。バブル崩壊後の不景気の中で、人員削減の意味でリストラという言葉が広まりました。
とりわけ、リストラは整理解雇を意味する場合が多いといえます。整理解雇とは、会社が経営上の理由で行う解雇です。通常の解雇は労働者側に原因があるのに対して、整理解雇は会社側に原因があります。
解雇の種類については、以下の記事をお読みください。
参考記事:解雇とは?種類やできるケースを会社側弁護士が解説
リストラ・人件費削減の代表的な方法は整理解雇です。整理解雇とは、会社が経営上の必要に迫られてする解雇です。会社の都合で一方的に雇用関係を終了させる行為であり、通常の解雇と比べても厳しい規制が課されています。
判例上、整理解雇の法的有効性は以下の4要件から判断されます。
経営状態が悪化していれば、人員削減の必要性は認められやすいです。
しかし、解雇はあくまで最終手段です。新規採用停止、希望退職者の募集、有期雇用労働者の雇止めといった他の手段を先にとり、解雇を避けるためにできる限りの努力をするよう求められます。まずは、人員削減のための別の方法を検討しましょう。
整理解雇の要件について詳しくは、以下の記事をお読みください。
参考記事:整理解雇とは?4要件や実施の流れを会社側弁護士が解説
契約社員やパート・アルバイトなどの雇止めも人件費を削減する方法のひとつです。雇止めとは、期間を定めて雇用している労働者との契約を更新せずに、期間満了により終了させることをいいます。
雇止めは、一般的に正社員の解雇よりも法的なハードルは低いです。とはいえ、以下のケースでは、解雇と同様に「客観的に合理的な理由」や「社会通念上の相当性」が要求されます(労働契約法19条)。
非正規従業員であるからといって、簡単に契約終了が認められるとは限りません。法律上の要件を満たすか確認して行う必要があります。
雇止めについて詳しくは、以下の記事をお読みください。
参考記事:雇止めとは?解雇との違いや有効要件・手続きを弁護士が解説
一方的に辞めさせるのではなく、退職勧奨により穏便にすませる方法もあります。退職勧奨とは、従業員に辞めてもらうよう会社が説得する行為です。
退職勧奨に直接の法的規制はありません。応じてもらえれば、法的リスクを避けつつ人員削減ができます。
ただし、個々の従業員の同意が不可欠であり、強制はできません。強要すれば違法です。言動に気をつけるとともに、退職金の上乗せなど特別な措置をとる必要があります。
退職勧奨について詳しくは、以下の記事で解説しています。
参考記事:退職勧奨とは?解雇との違いやメリット・デメリットを解説
希望退職者を募集するのも効果的です。個々の従業員に対して行う退職勧奨とは異なり、希望退職者の募集は社内全体、あるいは特定の部門・年齢・役職などを対象に行われます。
退職勧奨と同様、希望退職に応じるかは従業員の自由であるため、応じてもらえれば穏便にすませられます。しかし、退職金の上乗せなどの優遇措置が必要であるとともに、十分な人数が応募するとも限りません。他社でも評価される有能な人材が流出し、やる気のない従業員ばかり残ってしまうケースもあります。
よりリスクが低いのは新規採用の停止です。採用をやめるのは企業の自由であるため、法的リスクは回避できます。しかし、人件費が増加するのを防ぐだけであり、効果は限定的です。
なお、採用内定の取り消しは解雇に近い性質を有するためハードルが高いです。内定の法的意味については、以下の記事をご覧ください。
参考記事:採用・内定・試用期間の意味や企業が注意すべき法的問題点
職を失うことになる従業員との間でトラブルになるおそれがあります。労働者の生活基盤を奪う以上、一定の反発は避けられません。
特に、法律上の要件を満たしていないのに解雇や雇止めをすれば、裁判所に復職やバックペイの支払いを命じられてしまいます。退職勧奨もやり方を間違えると、金銭支払い等のリスクがあります。
トラブルになると、解決まで時間・手間を割かれてしまい、再建を目指す会社にとってはマイナスです。あらかじめ法律上問題がないかを確認し、進め方も十分に検討しなければなりません。
穏便にすんだとしても、退職金の上乗せなど、辞めてもらうにあたって会社に金銭的負担が生じるケースは多いです。出費は一時的であり長期的に見れば支出減につながるものの、経営が厳しい会社にとっては負担になり得ます。
希望退職者の募集などの場面では、どのように制度設計するかがポイントです。
リストラ後に、残された従業員のモチベーションが低下するおそれもあります。
経営の失敗により仲間を失ったり賃金をカットされたりすれば、経営陣への不信感が高まるでしょう。人員削減により1人あたりの業務量が増加すれば、残された人の負担感も増すと考えられます。そもそも、希望退職の募集により有能な従業員が去れば、やる気がない従業員ばかりになってしまう懸念もあります。
モチベーション低下を防ぐために、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
「リストラを実行した会社だ」とのイメージがつき、社内だけでなく対外的な評価が下がるおそれもあります。
経営持続のためにやむを得ない面があるとはいえ、可能な限りイメージ低下は避けたいところです。リストラの意図や今後のビジョンが伝わるように努める必要があります。
ここまで、リストラ・人件費削減について、方法やリスクを解説してきました。
リストラは一般的には解雇を意味すると考えられていますが、他の方法もあります。整理解雇は法的リスクが高いです。解雇は最終手段と考え、新規採用の停止、希望退職者の募集、有期雇用労働者の雇止めなど他の手段から検討するようにしましょう。
リストラ・人件費削減を検討している方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。ご相談いただければ、状況に応じて、考えられる方法、法的リスク、進め方などをアドバイスいたします。もちろん、既に争いに発展している場合には迅速に対応します。
「人件費削減の方法で悩んでいる」「リストラした従業員とトラブルになった」などとお困りの会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。