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労働対策コラム

通勤災害とは?労災が認定されるケース・されないケースを解説

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従業員が通勤中の事故でケガを負ったり亡くなったりした場合には、通勤災害が認定され、労災保険から給付がなされます。
もっとも、寄り道をした場合など、認定されないケースも存在します。
会社の担当者の方が判断に悩まれることもあるでしょう。

今回は、通勤災害の意味や認定基準を解説しています。
従業員が通勤中に事故に遭われた会社の経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

労災に関する基礎知識は、以下の記事で解説しています。

参考記事:労働災害(労災)とは?種類や会社が負う責任を解説

通勤災害とは?


弁護士
岡本 裕明
従業員が通勤中に交通事故などでケガを負うと、労災の一種である通勤災害が認定されます。まずは、通勤災害の正確な意味や業務災害との違いを見ていきましょう。

通勤を原因とするケガ・死亡

通勤災害とは「労働者の通勤による負傷・疾病・障害又は死亡」をいいます(労働者災害補償保険法7条1項3号)。

代表例は以下の通りです。

・車で通勤している際に交通事故に遭いむち打ちになった
・電車通勤の従業員が駅の階段から転落して骨折した
・会社に向かうために歩いていたところ看板が落下してきて頭にケガをした

簡単に言えば、通勤中に事故等によりケガをしたり亡くなったりした際に通勤災害が認定されます

業務災害との違い

通勤災害は労災(労働災害)の一種です。
通勤災害と認定されると、労災保険から従業員に各種給付がなされます。

労災には、他に業務を原因とする「業務災害」があります。
典型例は作業中の事故です。関係をまとめると次のようになります。

【労働災害・業務災害・通勤災害の関係】

労働災害:総称 業務災害 業務を原因とするもの
通勤災害 通勤を原因とするもの

 
労災と聞くと、業務災害をイメージする方が多いのではないでしょうか。
通勤中は業務時間ではなく、通勤中の事故が労災と扱われるのに疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。

たしかに、通勤は業務そのものではありません。
しかし仕事をするために欠かせない行為です。
にもかかわらず、通勤に伴うリスクをすべて労働者個人に負わせるのは酷といえます。
そこで、通勤中の事故も労災として扱い、給付対象とされています。

業務災害について詳しくは、以下の記事をお読みください。

参考記事:業務災害とは?労働災害・通勤災害との違いや認定基準を解説

通勤災害が認定される条件


弁護士
岡本 裕明
通勤災害が認定される条件は、ケガ等の原因が通勤にあることです。業務のために通勤としての移動をしている際に事故に遭ったといえる必要があります。業務と関係のない移動中の事故は対象になりません。

通勤災害の認定対象となる「通勤」の意味について、法律では以下の通り定められています。

労働者災害補償保険法7条2項
前項第三号の通勤とは、労働者が、就業に関し次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
一 住居と就業の場所との間の往復
二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

条文に記載のある「就業に関し」「次に掲げる移動」「合理的な経路及び方法」について順に解説します。

就業に関係する

通勤災害と認められるには、業務と密接な関係のある移動でなければなりません
業務に就くため、あるいは業務を終えたことによって行われる移動である必要があります。

出勤の際は、始業時刻に到着するための移動はもちろん、ラッシュを避けるために早出をしている場合や、寝坊により遅刻している場合も含まれます。
もっとも、午後からの出勤であるのに朝早くに移動しているなど、明らかに時間帯が異なる移動は対象外です。

退勤については、終業後に直ちに移動する場合だけでなく、体調不良による早退、多少会社に残った後の帰宅も含まれます。
組合活動やサークル活動のために残っていたとしても、あまりに長時間でなければ認定の対象です。

通勤とされる移動である

次に、労働者災害補償保険法7条2項の1~3号に規定されたいずれかの移動でなければなりません。

住居と職場との往復

まずは1号の「住居と就業の場所との間の往復」が対象となります。
一般的にイメージされる通勤は、これに該当します。

「住居」とは、就業のための拠点となる場所です。
家族と住んでいる自宅はもちろん、早出や残業のために職場近くに別途借りている家も含まれます。
地震や台風のため自宅からの通勤が困難な場合に臨時に借りたホテルであっても「住居」となります。

「就業の場所」とは、業務を開始または終了する場所です。
会社事務所や工場のほか、直行・直帰した際の取引先なども含まれます。

職場から別の職場への移動

2号の「就業の場所から他の就業の場所への移動」は、複数の職場で働いている労働者を想定した規定です。
たとえば、メインの仕事の職場から副業先の職場に移動するケースが該当します。

単身赴任などの場合

3号の「第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動」は少し理解しづらいかと思います。
典型例は単身赴任です。

転勤により単身赴任を余儀なくされたときに、週末に赴任先の住居から家族の住む家に帰る場合があります。
その際の事故も通勤災害の対象になり得ます。

合理的な経路・方法による

通勤災害と認定されるためには「合理的な経路・方法」での移動でなければなりません

経路については、会社に申請しているものだけでなく、通常考えられる別ルートや、交通事情により迂回した際のルートも含まれます。
方法についても、通常利用される徒歩・自転車・自動車・公共交通機関などであれば、会社に申請しているものでなくても、普段利用しているものでなくても構いません。

通勤に伴う危険が現実化した

以上の条件に加えて、一般的に通勤に伴うと考えられる危険が現実になったといえる必要があります。
代表的なのは、交通事故、転倒・転落、道路での落下物などです。

たまたま通勤中に第三者に殺されたなど、通勤とはおよそ無関係のものは通勤災害とはなりません。

途中で寄り道すると通勤災害にならない


弁護士
岡本 裕明
通勤中に寄り道をした際は、その後に事故が発生しても通勤災害とはなりません。ただし、日常生活に必要な行為であれば、その行為が終了して通勤経路に戻った後は対象になります。

通勤中に寄り道をした場合は、「逸脱」「中断」があったとして、「通勤」には該当しません
条文上は次の通り規定されています。

労働者災害補償保険法7条3項
労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない

以下で詳しく解説します。

逸脱・中断に該当する事例

通勤の途中で経路をそれたり関係のない行動をしたりすると、「逸脱」「中断」があったとして対象から外れます

逸脱・中断になる例としては以下が挙げられます。

・出勤前に喫茶店に立ち寄って朝食をとった
・帰宅時に友人と会って居酒屋で飲食した
・通勤経路上で途中下車して映画館で映画を鑑賞した

逸脱・中断とされると、その最中だけでなく、その後に経路に戻った後の事故についても認定の対象外となります
ただし、駅のトイレを使用する、経路上のコンビニで飲み物を購入するなど、ささいなものであるときには逸脱・中断とはなりません。

日常生活に必要な逸脱・中断の場合

上述の通り、逸脱・中断があると、その最中だけでなく、その後に経路に戻った後の事故も通勤災害と認められなくなります。
ただし、日常生活に必要な行為を最小限しただけのときは、経路に復帰した後は通勤と扱われます

日常生活に必要な行為の例は以下の通りです。

・経路から外れたスーパーで買い物をした
・通院のために病院に行った
・介護のため両親の自宅に立ち寄った

なお、通勤と扱われるのは、これらの逸脱・中断が終わって通勤経路に戻った後だけです。
スーパーでの転倒など、逸脱・中断中の事故は対象になりません

通勤災害になるかわからないときは弁護士にご相談ください


弁護士
岡本 裕明
通勤災害に該当するかわからず、会社が対応に困ってしまう場合もあるでしょう。お困りであればお気軽に弁護士にご相談ください。

ここまで、通勤災害の意味や認定基準について解説してきました。

通勤災害は労災の一種であり、通勤を原因とするケガ・死亡等をいいます。通勤に関係のない事故は労災とはなりません。通勤災害が発生した際には、会社として申請に協力する必要があります。

業務災害について困っていることがある方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください

当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。ご相談いただければ、通勤災害に該当するかを判断し、対応をサポートいたします。

「通勤災害に該当するか判断できない」「会社が何をすればいいかわからない」などとお悩みの方は、まずはお気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。

岡本裕明
記事の監修者
岡本裕明
弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士
■東京弁護士会
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