「転籍と出向の違いがわからない」「転籍させようとした従業員とトラブルになっている」とお困りでしょうか?
転籍(転籍出向、移籍出向)とは、会社との雇用関係を終了させ、他の企業と雇用関係を結ぶことです。
出向(在籍出向)とは異なり、従業員の籍が別の会社に移ります。
転籍には雇用調整できるメリットがありますが、従業員の個別の同意が不可欠です。
拒否されているのに強引に進めないようにしてください。
今回は、転籍について、意味やメリット・デメリット、出向との違い、注意点などを解説しています。
従業員を転籍させようと考えている企業の経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
人事異動に関する基本的な内容は、以下で解説しています。

転籍とは、現在勤務している会社との雇用関係を終了させ、他の会社と契約して籍を移すことです。
「転籍出向」「移籍出向」とも呼ばれます。
人事異動の一環として、グループ会社や関連会社などとの間で行われる場合があります。
元の会社との雇用関係が終了して別会社に移る点では「転職」と似ているといえるでしょう。
ただし、転職は主に労働者の意思により行われるのに対して、転籍は会社の都合でなされるという点が異なります。
人事異動として、元の会社との雇用関係を断ち切ったうえで別の会社に完全に移る点が転籍の特徴です。
会社が従業員を転籍させるメリットとしては、雇用調整ができる点が挙げられます。
社内で人員削減が必要になった際には、就職先を保証している転籍の方が整理解雇と比べて穏当な手段です。
中高年の従業員を適切に処遇することもできます。
整理解雇について詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。
参考記事:整理解雇とは?4要件や実施の流れを会社側弁護士が解説
他にもグループ会社との関係を強化するなどのメリットがあるため、一部の企業で転籍が活用されています。
会社が従業員を転籍させる際の最大のデメリットは、従業員の個別の同意が必要になる点です。
転籍は元の会社との雇用関係を終了させ別企業と雇用関係を成立させるものであり、従業員にとっては影響が大きいといえます。
そのため、従業員の同意が不可欠とされています(三和機材事件・東京地裁平成4年1月31日など)。
たとえ就業規則に「会社は転籍を命じられる」といった規定を置いたとしても、実際に転籍させる際に従業員の同意が必要です。
入社時に「転籍に同意する」と記された書面に署名させたとしても、転籍先企業を明示するなどしない限り意味がありません。
従業員の同意が必要で拒否されると強制できない点が、会社から見た転籍のデメリットといえます。

出向(在籍出向)とは、会社に籍を残したまま別の企業で働くことです。
転籍では籍そのものが移るため、この点で転籍と出向は異なります。
なお、配転(配置転換)では業務内容や勤務地が変わるだけで勤務する会社は変わりません。
転籍・出向・配転の違いをまとめると以下の通りです。

前述の通り、転籍させるには従業員の個別の同意が必須になります。
対して出向では、就業規則等に根拠規定があれば、必ずしも従業員の同意は要求されません。
入社時に出向への包括的な同意を得る方法もあります。
このように、実行する際に従業員の同意が必須になるかという点が、転籍と出向の要件の違いです。
なお、出向も自由にできるわけではなく、権利濫用とされる場合があります(労働契約法14条)。

繰り返している通り、転籍には従業員の個別の同意が不可欠です。
必ず同意をとるようにしてください。
会社に「転籍命令権」はなく、拒否されると強制はできません。
従業員に丁寧に説明して進めるよう心がけましょう。
トラブルに発展するリスクが高いため、くれぐれも無理やり同意させることのないようにしてください。
雇用関係の変更を伴う以上、転籍先の労働条件を明示してよく説明するようにしましょう。
後からトラブルにならないよう、必ず書面で示してください。
条件の中身についても、従業員に配慮して現在と比べて過度に悪化しないようにするのが望ましいです。
あまりに労働条件が悪いと、そもそも同意してもらえない可能性があります。
他に、退職金の支払いなども規定に沿って行うようにしてください。

ここまで、転籍について、意味やメリット・デメリット、出向との違い、注意点などを解説してきました。
転籍は出向とは異なり、在籍企業の変更を伴います。
従業員の同意が不可欠です。従業員に配慮し、強引に進めないようにしましょう。
転籍について疑問やお悩みがある方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。
ご相談いただければ転籍の進め方をアドバイスするとともに、既にトラブルになっているときは迅速に対応いたします。
「転籍を拒否された」「転籍させた従業員とトラブルになっている」などとお困りの会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。