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労働対策コラム

採用の自由とは?具体的な内容・制限を会社側弁護士が解説

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採用の自由とは?具体的な内容・制限を会社側弁護士が解説

企業には採用の自由があり、採用人数・募集方法・採用基準などを自由に決められます。採用に際して必要な調査も可能です。もっとも、男女差別の禁止など、採用の自由には一定の制限があります。損害賠償を請求されるおそれがあるため、ルールにしたがって採用活動をしなければなりません。
今回は、採用の自由について、内容や制限、代表的な判例を解説しています。人材を採用しようと考えている企業の経営者や人事担当者の皆様に知っておいて欲しい内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
内定や試用期間も含めて知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
参考記事:採用・内定・試用期間の意味や企業が注意すべき法的問題点

採用の自由とは?


弁護士
岡本 裕明
企業には「採用の自由」が認められています。解雇が厳しく制限される我が国において、採用を自由に行える点は企業にとって非常に重要です。まずは、採用の自由の意味や根拠を解説します。

企業には、事業を行うにあたって誰を採用して雇用契約を結ぶかについて自由が認められており、「採用の自由」と呼ばれます。
憲法22条29条では経済的自由が保障されており、自由な経済活動を行ううえで不可欠となる「契約の自由」が民法の原則として認められています。中でも雇用契約を結ぶ場面における契約の自由を意味するのが「採用の自由」だとお考えください。
我が国においては「解雇権濫用法理」により一旦雇用した後の解雇が厳しく規制されています。そのため、入口にあたる採用の自由は、企業が有能な人材を獲得して事業を営むうえでとりわけ重要です。
解雇については、以下の記事で解説しています。
参考記事:解雇とは?退職勧奨とは?両者の違いや注意すべき点を会社側弁護士が解説

採用の自由の内容


弁護士
岡本 裕明
採用の自由の内容としては、採用人数・募集方法・選考基準の自由などがあります。以下でより具体的な中身を見ていきましょう。

雇入れ人数決定の自由

まず、企業はそもそも採用をするか、するとしてその人数を自由に決められます。会社として事業を営んで利益をあげようとするうえで、何人採用するのかを自由に決定できるのは重要な要素のひとつです。

募集方法の自由

募集方法も会社が自由に決められます。いかなる方法で募集するかは、応募してくる労働者の人数・性質・属性を大きく左右するでしょう。
企業はハローワーク、広告情報誌、学校への求人など、募集方法を自由に決められます。公募せずに、縁故採用を選択しても構いません。

選択の自由

応募してきた労働者のうち誰を採用するかは自由です。どの人を採用するかだけでなく、いかなる基準で選考するかも自由に決められます。いかなる人材を採用するかによって会社の業績は変わってくるため、選択の自由は非常に重要です。
もっとも、一定の場合には選択の自由が制限されます。詳しくは後述します。

契約締結の自由

誰と雇用契約を結ぶかが自由であるだけでなく、特定の労働者との契約締結は強制されない点もポイントです。採用する人を外部から勝手に決められないということです。
たとえ採用過程に問題があって損害賠償が発生したとしても、雇用契約を結ぶことまでは基本的に強制されません。

調査の自由

採用過程では調査の自由も認められています。企業が採用・不採用を判断するにあたっては、能力・適性を見極めるために様々な情報が必要です。そこで、適切な選考のために必要な情報を収集できるものとされています。
もっとも、選考と関係ない情報を集めたり、プライバシー侵害になるような方法で調査したりすることは許されません

採用の自由に対する制限


弁護士
岡本 裕明
採用の自由にも限界があり、いくつかの法律により制約が課されています。また、質問すを避けるべき事項も存在します。ここでは、採用の自由への主な制限をご紹介します。

法律により採用の自由を制限するものとしては、以下が挙げられます。
・労働組合の不加入・脱退を雇用条件とする「黄犬契約」の禁止労働組合法7条1号
男女差別の禁止男女雇用機会均等法5条
障害者に対する差別の禁止障害者雇用促進法34条
年齢制限の原則禁止労働施策総合推進法9条
質問・調査をすべきでない事項としては、出生地、家族の職業、宗教・支持政党といった思想・信条に関係することなどが挙げられます。「業務に関係のないことは聞かない」と意識しておきましょう。
参考記事:不当労働行為とは?類型や具体例・会社側のリスクをわかりやすく解説

採用の自由に関する判例


弁護士
岡本 裕明
採用の自由に関係する有名な判例をご紹介します。

採用の自由に関する有名な判例が「三菱樹脂事件」です。

三菱樹脂事件判決(最高裁昭和48年12月12日)
【事案の概要】
原告は、被告会社の採用試験に合格し、大学卒業と同時に雇用された。しかし、試用期間の満了にあたって、採用試験の際に提出した身上書に虚偽の記載をした(在学中に学生運動に参加した事実を記載しなかったなど)ことを理由に本採用を拒否された。原告が労働者としての地位を有することの確認を求めて提訴したところ、1審・2審ともに本採用拒否が無効とされたため、被告会社が最高裁に上告した。
【結論】
破棄差戻し
【ポイント】
最高裁は以下の通り判示しました。
「企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであつて、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない
判決では、採用の自由が広く認められています。とはいえ、適正・能力に関係のない事項を採用基準としたり質問したりすることはないよう注意してください。

採用に関する法的問題は弁護士にご相談ください


弁護士
岡本 裕明
採用に際して不適切な方法を用いれば、損害賠償を請求されるリスクがあります。トラブルを避けるため、法的に気になる点は弁護士にご相談ください。

ここまで、採用の自由について、内容や制限、判例などを解説してきました。
採用の自由は広く認められていますが、男女差別や無関係な質問などは許されません。選考にあたっては細心の注意を払いましょう。

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岡本裕明
記事の監修者
岡本裕明
弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士
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