企業には採用の自由があり、採用人数・募集方法・採用基準などを自由に決められます。採用に際して必要な調査も可能です。もっとも、男女差別の禁止など、採用の自由には一定の制限があります。損害賠償を請求されるおそれがあるため、ルールにしたがって採用活動をしなければなりません。
今回は、採用の自由について、内容や制限、代表的な判例を解説しています。人材を採用しようと考えている企業の経営者や人事担当者の皆様に知っておいて欲しい内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
内定や試用期間も含めて知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
参考記事:採用・内定・試用期間の意味や企業が注意すべき法的問題点
企業には、事業を行うにあたって誰を採用して雇用契約を結ぶかについて自由が認められており、「採用の自由」と呼ばれます。
憲法22条、29条では経済的自由が保障されており、自由な経済活動を行ううえで不可欠となる「契約の自由」が民法の原則として認められています。中でも雇用契約を結ぶ場面における契約の自由を意味するのが「採用の自由」だとお考えください。
我が国においては「解雇権濫用法理」により一旦雇用した後の解雇が厳しく規制されています。そのため、入口にあたる採用の自由は、企業が有能な人材を獲得して事業を営むうえでとりわけ重要です。
解雇については、以下の記事で解説しています。
参考記事:解雇とは?退職勧奨とは?両者の違いや注意すべき点を会社側弁護士が解説
まず、企業はそもそも採用をするか、するとしてその人数を自由に決められます。会社として事業を営んで利益をあげようとするうえで、何人採用するのかを自由に決定できるのは重要な要素のひとつです。
募集方法も会社が自由に決められます。いかなる方法で募集するかは、応募してくる労働者の人数・性質・属性を大きく左右するでしょう。
企業はハローワーク、広告情報誌、学校への求人など、募集方法を自由に決められます。公募せずに、縁故採用を選択しても構いません。
応募してきた労働者のうち誰を採用するかは自由です。どの人を採用するかだけでなく、いかなる基準で選考するかも自由に決められます。いかなる人材を採用するかによって会社の業績は変わってくるため、選択の自由は非常に重要です。
もっとも、一定の場合には選択の自由が制限されます。詳しくは後述します。
誰と雇用契約を結ぶかが自由であるだけでなく、特定の労働者との契約締結は強制されない点もポイントです。採用する人を外部から勝手に決められないということです。
たとえ採用過程に問題があって損害賠償が発生したとしても、雇用契約を結ぶことまでは基本的に強制されません。
採用過程では調査の自由も認められています。企業が採用・不採用を判断するにあたっては、能力・適性を見極めるために様々な情報が必要です。そこで、適切な選考のために必要な情報を収集できるものとされています。
もっとも、選考と関係ない情報を集めたり、プライバシー侵害になるような方法で調査したりすることは許されません。
法律により採用の自由を制限するものとしては、以下が挙げられます。
・労働組合の不加入・脱退を雇用条件とする「黄犬契約」の禁止(労働組合法7条1号)
・男女差別の禁止(男女雇用機会均等法5条)
・障害者に対する差別の禁止(障害者雇用促進法34条)
・年齢制限の原則禁止(労働施策総合推進法9条)
質問・調査をすべきでない事項としては、出生地、家族の職業、宗教・支持政党といった思想・信条に関係することなどが挙げられます。「業務に関係のないことは聞かない」と意識しておきましょう。
参考記事:不当労働行為とは?類型や具体例・会社側のリスクをわかりやすく解説
採用の自由に関する有名な判例が「三菱樹脂事件」です。
ここまで、採用の自由について、内容や制限、判例などを解説してきました。
採用の自由は広く認められていますが、男女差別や無関係な質問などは許されません。選考にあたっては細心の注意を払いましょう。
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