「内定と内々定は法律上どう違うのか」「内々定を取り消していいのか」と疑問をお持ちではないですか。
一般的には、労働契約が成立しているか否かが大きな違いとして挙げられます。
内定を取り消すのは解雇と同じように難しいのに対して、内々定を取り消す法律上のハードルは比較的低いです。
とはいえリスクは存在するため、安易に取り消すのは望ましくありません。
今回は、内定と内々定の意味や違い、内々定の注意点などを企業向けに解説しています。
内々定の法的意味を知りたい会社経営者や人事担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
採用や試用期間を含めた基礎知識については、以下の記事で紹介しています。
参考記事:採用・内定・試用期間の意味や企業が注意すべき法的問題点
一般的に、内定の法的性質は「始期付き解約権留保付き労働契約」です(大日本印刷事件判決・最高裁昭和54年7月20日)。
「始期付き」とは勤務開始時期(4月1日など)が決まっていることを、「解約権留保付き」とは内定通知書に記載された事由に該当すれば会社が解約することを意味します。
条件はついているものの、内定はれっきとした労働契約です。
したがって、内定取り消しは解雇と同様に厳しく制限されます。
参考記事:解雇とは?退職勧奨とは?両者の違いや注意すべき点を会社側弁護士が解説
新卒採用においては、内定の前段階として「内々定」と呼ばれる状態が存在します。
一般的に新卒採用で学生に内定を出せるのは10月1日以降とされていますが、その前に採用する見込みであることを伝えるのが内々定です。
内々定は、内定時期に関するルールを守りつつ、人材を早期に確保するためになされます。
事前に口頭などで採用見込であると伝えて内々定の状態となり、10月を迎えて正式な内定通知を出して内定となるケースが多いです。
一般的に、内々定の段階では労働契約は成立しません。
労働契約が成立していない以上、内々定の取り消しは比較的ハードルが低くなります。
内定と内々定は、労働契約が成立しているかが異なります。
前述の通り、内定の法的性質は「始期付き解約権留保付き労働契約」であり、労働契約が成立した状態です。
その前段階である内々定は、企業が採用見込みであることを伝えただけであり、一般的に労働契約は成立していません。
もっとも、内々定の意味はケースバイケースです。
企業が内々定であるとしていても、採用を確信させる言動があり他社への就職活動を禁止しているようなケースでは、内定と同様に労働契約が成立したと判断される可能性があります。
労働契約が成立したかは、実態に即して判断しなければなりません。
労働契約が成立しているかによって取り消すハードルの高さは大きく異なります。
内定に伴い労働契約が成立していると、その解約は採用後の解雇と似た意味を持ちます。
すなわち、内定取り消しと解雇とは、労働契約を会社側が一方的にとりやめる点では同じです。
法律上、解雇は「解雇権濫用法理」により厳しく制限されています(労働契約法16条)。
同様に、内定の取り消しは法的なハードルが高く、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」とされています(大日本印刷事件判決・最高裁昭和54年7月20日)。
詳しくは、以下の記事をお読みください。
参考記事:内定取り消しは違法?理由になることやリスクを企業側弁護士が解説
対して内々定では、一般的に労働契約は成立していません。したがって、比較的自由に取り消せます。ただし、後述する通り、損害賠償が発生する、企業のイメージが低下するといったリスクが存在するため、安易に行わないようにしましょう。
一般的に内々定の段階では労働契約は成立しません。しかし、採用を確約して他社への就職を禁じる、研修への参加を義務付けるなどしていれば、労働契約が成立したと評価されるおそれがあります。
企業がどう考えているかではなく、様々な事情から実質的に契約が成立したといえるかで判断されるので注意してください。
連絡がまったくとれないなど、内々定の取り消しを考えるケースもあるでしょう。
労働契約が成立していなければ、法的には内々定の取り消しはある程度自由にできます。
しかし、以下のリスクは頭に入れておいてください。
労働契約が成立していない以上、内々定を取り消された側が労働者としての地位を主張することはできません。
しかし、入社できるとの期待を侵害したとして、損害賠償が発生する可能性は存在します。
やむを得ず内々定を取り消すにしても、十分な説明を行うなど、誠実な対応が求められます。
たとえ法的に問題がないとしても、内々定の取り消しは企業のイメージを低下させるおそれがあります。
とりわけ、現代はSNSや口コミサイトにおいて事実を簡単に拡散される時代です。
会社としては、ネット上で炎上するリスクを頭に入れて慎重に行動しなければなりません。
ここまで、内定と内々定の違いや注意点を解説してきました。
両者の大きな違いは、労働契約が成立しているか否かです。
内々定で労働契約が成立していなければ、会社は比較的自由に取り消すことができます。
もっとも、損害賠償やイメージ低下のリスクも伴うため、慎重に対応しなければなりません。
内定・内々定に関する法的問題は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。
ご相談いただければ、労働契約が成立しているか、取り消してもよいかなどをアドバイスいたします。
既にトラブルに発展している場合にも迅速に対応いたします。
内定や内々定を取り消してよいかわからない、あるいは実行してトラブルになっている会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。