「労働基準監督署から立ち入り調査の連絡を受けた」「調査はどんなときにあるのか」などとお悩みでしょうか?
労働基準監督署(労基署)の立ち入り調査(臨検)は、労働関係の法令違反がないかを確認するために行われます。労働者からの通報をきっかけとする場合だけでなく、計画に基づいて無作為に実施される場合も多いです。調査があったからといって、必ずしも会社に問題があるわけではありません。調査により法令違反を指摘された際には、改善に取り組んで報告するようにしましょう。
今回は、労働基準監督署の立ち入り調査に関して、対象になる理由、流れ、対処法などを解説しています。労働基準監督署による調査について知りたい会社経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
労働基準監督署への対応全般については、以下の記事で解説しています。
参考記事:労働基準監督署(労基署)への対応のポイントを弁護士が解説
立ち入り調査(臨検)は、労働関係の法令が守られているかを確認するために実施されます。対象となる法令は、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などです。
代表的な調査内容としては以下が挙げられます。
● 労働時間規制が守られているか
● 残業代(割増賃金)は支払われているか
● 最低賃金を下回っていないか
● 就業規則は作成・周知されているか
● 労働条件の明示はされているか
● 年次有給休暇は付与・取得されているか
● 健康診断は実施されているか
● 安全衛生管理は十分になされているか
書類・帳簿のチェックや事情聴取などを通じて、法令が遵守されているかを確認します。なお、企業への立ち入りではなく、労働基準監督署に呼び出すケースもあります。
調査の種類としては、以下が挙げられます。
● 定期監督
● 申告監督
● 災害時監督
● 再監督
順にみていきましょう。
定期監督は、労働基準監督署の計画に基づいて行われる調査です。国の重要政策、労働災害の発生状況などをもとに計画が立てられ、対象となる事業所が決まります。「〇年に一度」と頻度が定められているわけではありません。
定期監督は普段の状況の確認のために行われるため、抜き打ちでされる場合が多いです。会社に問題がなくても、定期監督の対象になる可能性はあります。立ち入り調査の多くを定期監督が占めています(参考:令和4年労働基準監督年報 p.9|厚生労働省)。
申告監督は、労働者からの申告をきっかけとして行われる調査です。企業の従業員から通報があり、法令違反の疑いがあると判断されると実施されます。
通報に至る原因としては、賃金不払い、長時間労働などが挙げられます。問題点を確実に調査するために、事前に連絡がある場合が多いです。
「労基署の立ち入り調査は従業員からのタレコミをきっかけに実施される」とイメージしている方もいらっしゃるでしょう。しかし実際には、申告監督が占める割合は1割程度しかありません(参考:令和4年労働基準監督年報 p.9|厚生労働省)。
参考記事:労働基準監督署に通報されたらどうなる?その後の流れや対処法を解説
災害時監督とは、労働災害(労災)の発生をきっかけとして行われる調査です。法令違反により労災が発生したと疑われる場合などに実施されます。
事前に連絡をするケースもあれば、抜き打ちのケースもあります。労災の発生状況や関連する点を確認するための調査です。
労災について詳しくは、以下の記事をお読みください。
参考記事:労働災害(労災)とは?種類や会社が負う責任を解説
後述する通り、調査で問題が発覚すれば是正勧告等がなされ、会社は期限までに改善状況を報告しなければなりません。改善状況を確かめる必要がある場合や、報告自体がなされない場合には、再監督が実施される可能性があります。
調査には、事前連絡があるケースと抜き打ちのケースがあります。一般的には、定期監督では抜き打ち、申告監督では事前連絡がある場合が多いです。
電話等で事前連絡を受けた際には、指示された書類を準備しておきましょう。抜き打ちの場合でも、すみやかに用意してください。
調査の拒否はしないでください。拒否すると、強制捜査の対象となり送検されるリスクが高まります。
どうしても対応が難しいときは、理由を説明して日時の調整を試みるのがよいでしょう。
当日の調査は、主に以下の方法で行われます。
● 帳簿・書類のチェック
● 事業主や従業員からの聴き取り
● 現場の確認
調査の妨害や書類の偽造、虚偽供述などは許されません。「30万円以下の罰金」というペナルティも用意されていますので、絶対にしないでください(労働基準法120条4号)。
調査により問題が見つかった場合には、是正勧告や指導がなされます。
是正勧告は、明確な法令違反に対してとられる措置です。「是正勧告書」が交付されます。
指導は、法令違反とまではいえなくても、望ましくない状態であるときになされます。このとき交付されるのは「指導票」です。
是正勧告・指導がなされた際は、会社は改善状況を報告しなければなりません。怠ると再監督が入る可能性があるほか、送検されるケースもあります。期日までに改善を進め、証拠資料とともに報告書を提出するようにしてください。
何よりも、普段から法令遵守を心がけるのが重要です。従業員に通報されて申告監督に入られるリスクを下げるだけでなく、定期監督の対象になっても問題を指摘されづらくなります。日頃から、法令上要求されている帳簿・規定の作成や、体制の整備を進めておく必要があります。
調査の事前連絡があったときは、指定された書類を出せるように準備しましょう。問題点を事前に正すのは、改善を進める姿勢を示すために有効な場合もあります。とはいえ、過去の事実の偽装は決してしないでください。
調査には素直に従い、拒否や妨害、虚偽供述などはしないでください。
問題点を指摘された際には、改善を進めて報告しましょう。調査をきっかけに改善を進めれば事態は深刻化せずにすみます。反対に無視すると、再調査や送検に至るリスクが大きいです。
「日頃の備えが重要」「調査後に改善を進める」と言われても、何をすればいいかわからない方も多いでしょう。不安や疑問は弁護士にご相談ください。
弁護士に相談すれば、調査への事前準備、当日の同席、指摘された問題点の改善などでサポートを受けられます。調査への不安も解消されるはずです。お気軽にお問い合わせください。
ここまで、労働基準監督署の立ち入り調査について、流れや対処法などを解説してきました。
立ち入り調査は、特に思い当たる節がなくても実施されるケースがあります。日頃から法令遵守を心がけるとともに、調査には誠実に対応し、指摘された問題点は直ちに改善するようにしましょう。
労働基準監督署の立ち入り調査に不安を抱えている方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事労務担当者の皆様の味方です。調査への対応方法のアドバイスや同席だけでなく、問題点の改善まで徹底的にサポートいたします。
「労基署から立ち入り調査の連絡がきた」「どう改善・報告すればいいかわからない」などとお悩みの方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。