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就業規則

就業規則とは?効力や記載事項、作成・変更方法を弁護士が解説

就業規則は、職場におけるルールブックです。法的に強い効力があるため、従業員とのトラブルを避けるためには有用といえます。法令にしたがって記載すべき事項を記載し、手続きを踏んで作成・変更するようにしましょう。
今回は、就業規則の効力や記載事項、作成・変更方法などをまとめています。就業規則の作成や変更をお考えの企業の経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

就業規則とは?


弁護士
荒川 香遥
就業規則は職場におけるルールブックにあたります。労働者に個々の同意をとらなくてもルールを定められ、無用なトラブルを防止できる点で有用です。法律上作成が義務づけられている場合はもちろん、義務がなくても作成を検討するとよいでしょう。
まずは、就業規則の意味や法律上の効力、作成が義務づけられるケースについてご紹介します。

職場におけるルールブック

就業規則とは、労働条件や職場規律について使用者が定める規則の総称です。簡単に言えば、職場におけるルールブックです。「就業規則」と名前がついている文書だけでなく、「賃金規程」「退職金規程」なども含まれます。
就業規則によって、多数の労働者の労働条件等をまとめて定められます。労働者と個別に話し合うことなく、就業規則を労働関係におけるルールにできる点がメリットです。ルールが明確になり、トラブルを防ぐ意味もあります。
会社にとっても従業員にとっても、雇用関係上のルールを定めた就業規則は重要な意味をもつ書面です。

就業規則の効力

就業規則の法律上の効力については、労働契約法に以下の定めがあります。

  • 労働者の個別の同意なく、労働契約の内容を定められる7条
  • 就業規則を下回る条件を労働者と個別に定めても無効となり、就業規則のルールが適用される(12条
  • 就業規則のうち、法令(労働基準法など)や労働協約に反する部分は無効になる(13条

就業規則は強い効力を有する一方で、法令や労働協約に反している部分は効力を持ちません。たとえば「有給は付与しない」と就業規則で定めても、労働基準法39条に反するため無効です。

常時10人以上雇用していると作成が義務づけられる

「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は、就業規則を作成しなければなりません労働基準法89条柱書)。
10人以上かどうかは、事業場(工場・事務所・店舗など)単位で判断されます。正社員だけでなく、契約社員、パートタイマー、アルバイトなども労働者にあたるため人数に含みます。
義務があるのに就業規則を作成しないと「30万円以下の罰金」というペナルティも存在します(労働基準法120条)。たとえ法律上の義務がなくても、トラブルを防止するためには作成が望ましいです。また、同じ事業場において職種別に作成しても構いません。

就業規則の記載事項


弁護士
荒川 香遥
就業規則の記載事項は「必ず記載するもの」「制度を定める場合は記載するもの」「記載するか自由であるもの」に分けられます。順に見ていきましょう。

必ず記載する事項

必ず記載する事項(「絶対的記載事項」と呼ばれます)としては以下が挙げられます(労働基準法89条1号〜3号)。

  • 労働時間(始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇など)
  • 賃金(決定・計算・支払方法、締切り・支払時期、昇給に関する事項。ボーナスや退職手当は除く)
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

これらについては、必ず記載しなければなりません

制度を定める場合に記載する事項

制度を置く場合には記載すべき事項(「相対的記載事項」と呼ばれます)としては以下が挙げられます(労働基準法89条3号の2〜10号)。

  • 退職手当(適用される労働者の範囲、決定・計算・支払方法、支払時期)
  • 臨時の賃金や最低賃金額
  • 食費・作業用品等の負担
  • 安全衛生
  • 職業訓練
  • 災害補償・業務外の疾病扶助
  • 表彰・制裁
  • 以上のほか、事業場の労働者すべてに適用される事項

たとえば、退職手当やボーナスの制度を設ける場合には、就業規則(賃金規程や退職金規程も含む)に記載する必要があります。

記載が任意である事項

ここまで紹介した事項以外でも、会社が盛り込みたい内容(「任意的記載事項」と呼ばれます)を記載して構いません。
例としては、以下が挙げられます。

  • 企業理念
  • 適用範囲
  • 服務規律
  • 採用
  • 異動
  • 休職制度
  • 副業の可否

法律上義務づけられていなくても、就業規則で明確にしておく意味は大きいです。会社として必要と考える事項を記載しましょう。

就業規則の作成・変更方法


弁護士
荒川 香遥
就業規則を作成する際には、従業員の意見を聴き、労働基準監督署に届け出たうえで、労働者に周知しなければなりません。作成後の変更の場合には、労働者にとって不利益な変更であれば法律上のハードルが高まります。
以下で、作成手続きを順に見たうえで、不利益変更の注意点をご紹介します。

文案を作成する

まずは、会社側が内容を検討して、案を作成しましょう。前述した絶対的記載事項や相対的記載事項はもちろん、必要に応じた内容を盛り込んでください。
ネット上で探せば、厚生労働省が示す「モデル就業規則」のほか、様々なひな形が見つかります。ひな形には一般的に記載されるべき内容が含まれており有用です。
しかし、会社ごとに事情は異なる以上、ひな形とまったく同じ内容では不適切です。個々の状況に応じたカスタマイズが不可欠になります。

従業員の意見を聴く

文案を作成したら、従業員の意見を聴きましょう。法律上、「労働者の過半数で組織する労働組合」、それがない場合には「労働者の過半数を代表する者」の意見を聴かなければなりません労働基準法90条1項)。
あくまで意見を聴けばいいのであり、同意までは不要です。とはいえ、従業員の意見を無視して進めると円滑な会社運営ができなくなるおそれがあります。意見を取り入れて修正すべきケースもあるでしょう。

労働基準監督署に届け出る

作成した就業規則は、労働基準監督署に届け出なければなりません労働基準法89条柱書)。届出の際には、労働者の代表の意見を記した意見書を添付する必要があります(労働基準法90条2項)。

従業員に周知する

就業規則は従業員に周知しなければなりません(労働基準法106条1項)。
周知の方法としては、以下が挙げられます。

  • 作業場の見やすい場所に掲示する・備え付け
  • 書面を交付する
  • 社内システムから閲覧できるようにする

就業規則を作成しても、従業員が内容を知りようがない状態では意味がありません。実際に細かい内容を理解しているかは別にして、アクセスできる状態にしておく必要があります。

不利益変更には注意

就業規則の変更も、作成と同様の手続きで行います。過半数代表の意見を聴いたうえで、労働基準監督署に届け出て、労働者に周知しなければなりません。
従業員にとって不利益な内容に変更する場合には特に注意が必要です。
原則として、労働者に不利益となる変更は認められません(労働契約法9条本文)。ただし、以下の事情に照らして合理的な変更であれば可能です(労働契約法10条)。

  • 労働者が受ける不利益の程度
  • 変更の必要性
  • 変更後の内容の相当性
  • 労働組合等との交渉状況

とりわけ、賃金、退職金といった労働者にとって重要な事項を変更する場合にはハードルが高まります。慎重に進めるようにしてください。

就業規則についてお困りの方は弁護士にご相談ください


弁護士
荒川 香遥
適切に就業規則を作成・変更するのは、なかなか難しいです。ぜひ弁護士にご相談ください。

ここまで、就業規則について、意味、法的効力、記載事項、作成・変更方法などを解説してきました。
就業規則には、会社が従業員の労働条件をまとめて定められ、トラブルを防げるメリットがあります。必要事項を盛り込んで条項を作成し、従業員の意見を聴いたうえで届出を行い、周知しなければなりません。従業員にとって不利な変更には特に注意が必要です。

就業規則の作成・変更を検討している方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください
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