就業規則は、職場におけるルールブックです。法的に強い効力があるため、従業員とのトラブルを避けるためには有用といえます。法令にしたがって記載すべき事項を記載し、手続きを踏んで作成・変更するようにしましょう。
今回は、就業規則の効力や記載事項、作成・変更方法などをまとめています。就業規則の作成や変更をお考えの企業の経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
就業規則とは、労働条件や職場規律について使用者が定める規則の総称です。簡単に言えば、職場におけるルールブックです。「就業規則」と名前がついている文書だけでなく、「賃金規程」「退職金規程」なども含まれます。
就業規則によって、多数の労働者の労働条件等をまとめて定められます。労働者と個別に話し合うことなく、就業規則を労働関係におけるルールにできる点がメリットです。ルールが明確になり、トラブルを防ぐ意味もあります。
会社にとっても従業員にとっても、雇用関係上のルールを定めた就業規則は重要な意味をもつ書面です。
就業規則の法律上の効力については、労働契約法に以下の定めがあります。
就業規則は強い効力を有する一方で、法令や労働協約に反している部分は効力を持ちません。たとえば「有給は付与しない」と就業規則で定めても、労働基準法39条に反するため無効です。
「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は、就業規則を作成しなければなりません(労働基準法89条柱書)。
10人以上かどうかは、事業場(工場・事務所・店舗など)単位で判断されます。正社員だけでなく、契約社員、パートタイマー、アルバイトなども労働者にあたるため人数に含みます。
義務があるのに就業規則を作成しないと「30万円以下の罰金」というペナルティも存在します(労働基準法120条)。たとえ法律上の義務がなくても、トラブルを防止するためには作成が望ましいです。また、同じ事業場において職種別に作成しても構いません。
必ず記載する事項(「絶対的記載事項」と呼ばれます)としては以下が挙げられます(労働基準法89条1号〜3号)。
これらについては、必ず記載しなければなりません。
制度を置く場合には記載すべき事項(「相対的記載事項」と呼ばれます)としては以下が挙げられます(労働基準法89条3号の2〜10号)。
たとえば、退職手当やボーナスの制度を設ける場合には、就業規則(賃金規程や退職金規程も含む)に記載する必要があります。
ここまで紹介した事項以外でも、会社が盛り込みたい内容(「任意的記載事項」と呼ばれます)を記載して構いません。
例としては、以下が挙げられます。
法律上義務づけられていなくても、就業規則で明確にしておく意味は大きいです。会社として必要と考える事項を記載しましょう。
まずは、会社側が内容を検討して、案を作成しましょう。前述した絶対的記載事項や相対的記載事項はもちろん、必要に応じた内容を盛り込んでください。
ネット上で探せば、厚生労働省が示す「モデル就業規則」のほか、様々なひな形が見つかります。ひな形には一般的に記載されるべき内容が含まれており有用です。
しかし、会社ごとに事情は異なる以上、ひな形とまったく同じ内容では不適切です。個々の状況に応じたカスタマイズが不可欠になります。
文案を作成したら、従業員の意見を聴きましょう。法律上、「労働者の過半数で組織する労働組合」、それがない場合には「労働者の過半数を代表する者」の意見を聴かなければなりません(労働基準法90条1項)。
あくまで意見を聴けばいいのであり、同意までは不要です。とはいえ、従業員の意見を無視して進めると円滑な会社運営ができなくなるおそれがあります。意見を取り入れて修正すべきケースもあるでしょう。
作成した就業規則は、労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法89条柱書)。届出の際には、労働者の代表の意見を記した意見書を添付する必要があります(労働基準法90条2項)。
就業規則は従業員に周知しなければなりません(労働基準法106条1項)。
周知の方法としては、以下が挙げられます。
就業規則を作成しても、従業員が内容を知りようがない状態では意味がありません。実際に細かい内容を理解しているかは別にして、アクセスできる状態にしておく必要があります。
就業規則の変更も、作成と同様の手続きで行います。過半数代表の意見を聴いたうえで、労働基準監督署に届け出て、労働者に周知しなければなりません。
従業員にとって不利益な内容に変更する場合には特に注意が必要です。
原則として、労働者に不利益となる変更は認められません(労働契約法9条本文)。ただし、以下の事情に照らして合理的な変更であれば可能です(労働契約法10条)。
とりわけ、賃金、退職金といった労働者にとって重要な事項を変更する場合にはハードルが高まります。慎重に進めるようにしてください。
ここまで、就業規則について、意味、法的効力、記載事項、作成・変更方法などを解説してきました。
就業規則には、会社が従業員の労働条件をまとめて定められ、トラブルを防げるメリットがあります。必要事項を盛り込んで条項を作成し、従業員の意見を聴いたうえで届出を行い、周知しなければなりません。従業員にとって不利な変更には特に注意が必要です。
就業規則の作成・変更を検討している方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。ご相談いただければ、作成・変更の内容や手続きをアドバイスいたします。会社の実情に即した内容とするには、ひな形のままでは足りません。専門家への相談・依頼がオススメです。
「就業規則をどう作成すればいいかわからない」「スムーズに変更したい」などとお悩みの方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。