「うつ病で仕事ができない従業員を解雇したい」とお悩みでしょうか?
うつ病などの精神疾患を理由に解雇できるかは、病気になった原因次第です。業務が原因のときは、基本的に解雇はできません。プライベートが原因の場合、休職させても復帰できないのであれば自然退職や解雇となるのが一般的です。
今回は、うつ病を理由に解雇できるかについて解説しています。うつ病に罹患した従業員への対応にお困りの会社の経営者や人事・労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
業務が原因で精神疾患になっていれば、基本的に解雇はできません。労働基準法19条に規定があります。
規定によると、業務上の疾病を理由に休業している期間と、その後の30日間は解雇ができません。もっとも精神疾患においては、業務が原因となっているか自体が争いになるケースが多いです。
業務が原因でうつ病になったと判断されれば、解雇が無効とされ、バックペイなどの支払いを強いられます。業務が原因でないか、慎重に判断しなければなりません。
なお、業務が原因で精神疾患になって休業したとしても、打切補償をした場合には例外的に解雇が可能です(労働基準法19条1項ただし書)。打切補償は、療養開始後3年を経過しても治癒しない場合に、平均賃金1200日分の補償を支払うことでその後の補償を免除させる制度です(労働基準法81条)。最終的に解雇するまでには時間やお金がかかります。
メンタルヘルス不調の原因が業務以外にあるケースでは、社内の休職制度を利用させるのが一般的です。
業務以外にうつ病の原因があるときの流れは、おおまかに以下の通りです。
精神疾患に罹患した従業員に対しては、状況に応じて業務時間の短縮、業務内容の変更、配置転換などの配慮をする必要があります。医師による診断の結果、就業そのものが難しいのであれば、
休職制度がある会社では、定めに従って休職の手続きを進めます。仮に休職制度が存在しないとしても、うつ病を理由に直ちに解雇するのは避けてください。いったん休ませずに直ちに解雇すれば、無効とされるリスクが高いです(労働契約法16条)。
休職期間が満了したら、
判断に際しては医師の診断が重要になります。医師が「復職が可能」と診断しているのに、会社が「治癒していない」として解雇すれば、違法とされるリスクが高いです。
ただし、患者である従業員に言われた通りに、主治医が診断書を書いているだけのケースもあります。会社が指定する別の医師の診断も受けさせるなどして、復職の可否を慎重に検討してください。
休職前の業務に復帰できないとしても、軽微な業務であれば可能な場合があります。
特に職種や業務内容を限定しないで雇用しているケースでは、配置転換などにより現実的に従事させられる業務がある場合、従業員が別の業務でも復職を望むのであれば応じる必要があります(参考:最高裁平成10年4月9日・片山組事件判決)。
反対に、契約上職種や業務内容が限定されているときは、当該業務に復帰できないのであれば復職拒否が認められやすいです。ただし、当初は従来の業務が難しいとしても、近いうちに元の業務に復帰できる可能性があるときは配慮する必要があり、直ちに解雇してはなりません。
いずれにしても、
解雇が法的に難しい場合であっても、退職勧奨は可能です。従業員が説得に応じれば、円満に辞めてもらえます。
もっとも、メンタルヘルスに問題を抱えている従業員が退職を勧められれば、心理的な負担がとりわけ大きいでしょう。退職勧奨そのものが違法と判断されるリスクも高まるため、細心の注意を払ってください。
病気を理由にした退職勧奨については、以下の記事で解説しています。
参考記事:退職勧奨の理由になること|能力不足・病気の従業員に退職勧奨できる?
症状が改善しておらず、会社が配慮しても復職が困難なケースでは、辞めてもらわざるを得ません。就業規則の規定に従って、自然退職となる、あるいは解雇をする形になります。
なお、くれぐれも休職期間のカウントは間違えないようにしてください。就業規則をよく読まずに休職期間の満了前に解雇すると、違法になってしまいます。
うつ病を理由とした解雇が不当と判断されると、従業員としての地位が残っている形になります。したがって、無効と判断されるまでの期間について賃金(バックペイ)を支払わなければなりません。争いが長引いているケースほど、支払額が膨らみやすいです。
また、解雇したこと自体が不法行為に該当し、慰謝料を請求される可能性もあります。
後から多額の支払い義務が発生しないように、解雇する際には細心の注意を払ってください。
ここまで、うつ病の社員を解雇できるかについて解説してきました。
うつ病になった原因が業務にあるときは、基本的に解雇はできません。業務以外に原因があれば、いったん休職させた後に自然退職か解雇となるのが一般的です。ただし、元の業務が完全にできない状態であっても、他の仕事をさせる、少しずつ仕事に慣れさせるなどの配慮が必要なケースがあります。強引に辞めさせないように気をつけましょう。
うつ病の従業員への対応にお悩みの方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。精神疾患を抱えた従業員の処遇、会社がすべき配慮、今後問題が生じないための対策などをアドバイスいたします。
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