セクハラを受けた被害者が、加害者本人だけでなく、会社にも慰謝料を請求してくるケースはよくあります。
実際に、会社に賠償責任が認められる事例も多いです。
セクハラの慰謝料相場は数十万円から300万円程度です。
金額は、セクハラ行為の内容や被害者に与えた影響等により変わります。
請求を受けた際には、事実を確認したうえで誠実に対応しなければなりません。
今回は、セクハラの慰謝料相場や実際の事例、請求された会社の対応などについて解説しています。
セクハラが発生した会社の経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
セクハラに関する基礎知識は、以下の記事で解説しています。
参考記事:セクハラ・パワハラとは?会社が負う責任やとるべき対策を解説
セクハラとは、職場で行われる、相手方の意思に反する性的な言動です。
例としては以下が挙げられます。
・昇進の対価として性行為に応じさせる
・性的な発言をして職場環境を害する
・必要がないのに身体に触れる
・断られているのにデートに執拗に誘う
「男性から女性」だけでなく、男性が被害者となるセクハラや、同性間でのセクハラも存在します。
セクハラの判断基準について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
参考記事:セクハラはどこから?判断基準や裁判例を弁護士が解説
セクハラで会社が賠償義務を負う理由として、まずは「使用者責任」が挙げられます(民法715条)。
使用者責任とは、雇われている人が事業の執行にあたって他者に損害を与えたときに、会社が負う賠償責任です。
職務に際して行われたセクハラにより従業員に損害賠償義務が生じた際には、会社も賠償責任を負います。
職場での業務時間中だけでなく、業務の延長として行われる宴会などで行われたセクハラについても、職務関連性が認められ、会社が責任を負います。
使用者責任を根拠とする請求に会社が反論するのは難しいです。
使用者責任とは別に、会社は従業員に対して「働きやすい職場環境を維持する義務」を負っています。
会社は、セクハラをしてはならない旨の周知啓発、相談窓口の設置、発生後の適切な対応などを行わなければなりません。
セクハラへの対策・対応が不十分だと、職場環境配慮義務を果たしていないとして、債務不履行(民法415条)あるいは不法行為(民法709条)を根拠として会社に責任が生じるおそれがあります。
加害者本人の責任を前提とする使用者責任に対して、職場環境配慮義務違反は、会社が直接負う責任です。
被害者は、いずれを根拠として請求してもよく、両方を主張しても構いません。
会社がとるべきセクハラ対策については、以下で解説しています。
参考記事:セクハラとは?定義・種類・会社がとるべき対策を解説
過去の裁判例からすると、セクハラの慰謝料相場は、数十万円から300万円程度になります。
程度が軽いときには10万円以下、著しく悪質なときは300万円超となり得ますが、大半のケースでは数十万円から300万円程度です。
一応の相場があるとはいえ、個々のケースで認められる慰謝料額は千差万別です。
慰謝料額を左右する要素としては、以下が挙げられます。
実際に行われたセクハラ行為そのものの悪質性は、慰謝料額に影響を与えます。
影響が大きいのは身体接触の有無です。
性的な発言があったのみで身体接触がないときには、慰謝料は低くなります。
身体接触があると賠償額が上がり、特に不同意わいせつ罪・不同意性交等罪といった重大犯罪に該当するときは高額になりやすいです。
行為が継続した期間・頻度・回数も慰謝料額を左右します。
長期間・高頻度・多数回であれば、金額は高くなりやすいです。
被害者にもたらした結果も重要です。
セクハラにより休職・退職に追い込まれたときは、高額になります。
セクハラが原因でうつ病などの精神疾患を発症したときも同様です。
仕事ができなくなると、慰謝料(精神的苦痛に対する賠償金)だけでなく、休業損害や逸失利益も発生するため、賠償総額が増加する傾向にあります。
参考記事:うつ病は労災認定される?認定基準や会社の対応を弁護士が解説
まずは、性的発言のみで身体接触がなかったケースです。
次に紹介するのは、異性関係に関する噂を流したケースです。
最後に、高額な賠償金が認められたケースをご紹介します。
以上の通り、ケースによって慰謝料額は大きく異なります。
いまだ事実関係を十分に把握していない状態であれば、まずは確認が必要です。
セクハラの有無や内容がわからない限り、適切な対応はできません。
調査では、当事者からの聴き取りだけでなく、関係者への事情聴取、客観的な証拠の収集も行ってください。
事実関係が明らかになり、セクハラの事実が確定したら、加害者への処分を検討します。
加害者への適切な処分は、会社に課された義務の一環です。
もちろん軽すぎる処分ではいけませんが、行為に対して重すぎる処分をすると、加害者から無効を主張されるおそれがあります。
処分内容は慎重に検討してください。
請求を受けている以上、内容を確認したうえで主張を検討しなければなりません。
被害者の主張が事実と認められるのであれば、損害賠償が発生することを前提に、行為態様等から慰謝料額が適切かを判断します。
セクハラの事実がないのであれば、慰謝料を支払わない旨の反論を行います。
いずれにしても、請求を軽視せず、誠実に対応するようにしてください。
ここまで、セクハラの慰謝料について、法的根拠や金額の相場、会社がとるべき対応などを解説してきました。
セクハラが発生した際には、使用者責任や職場環境配慮義務違反を理由として、会社にも損害賠償責任が生じる可能性があります。
事実を調査したうえで、行為態様などから慰謝料額の相場を判断し、対応を検討しなければなりません。
セクハラで慰謝料を請求された会社関係者の方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。
事実関係に誤りはないか、請求額が相場に比して過大ではないかなど、被害者の請求内容を吟味したうえで適切な対応をいたします。
「会社にセクハラへの責任が生じるのか」「請求された慰謝料額は妥当なのか」などと疑問をお持ちの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。