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労働対策コラム

出向を拒否されたら?会社がとるべき対応を弁護士が解説

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従業員に出向を拒否されてお困りではないですか?

就業規則等に根拠規定があれば、会社は出向命令を出せます。
業務命令である以上、基本的に従業員は従わなければなりません。

もっとも、必要性がない、人選に問題がある、従業員に生じる不利益が大きいといったケースでは、従業員は拒否できます
拒否に正当な理由があるときは、解雇をはじめとする処分はできません。
出向をめぐるトラブルを防ぐには、十分に話し合いをしたうえで慎重に進める必要があります。

今回は、出向拒否が認められるケースや会社がとるべき対応などを解説しています。
従業員に出向を拒否されてお困りの会社経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

人事異動に関する一般的な知識は、以下の記事で解説しています。

参考記事:配転・出向・転籍の意味と要件を会社側弁護士が解説

出向命令には根拠が必要


弁護士
岡本 裕明
出向(在籍出向)とは、会社に籍を残したまま、他社で業務をすることです。働く会社が変わるため、社内での配置転換と比べて従業員に与える影響が大きいといえます。会社が従業員に出向を命じるには、就業規則等に根拠規定が存在しなければなりません。まずは、出向命令を出すために必要な根拠についてご説明します。

会社が出向命令を出すには、就業規則や労働協約などに明確な根拠となる規定が必要です。
代表的な判例として、新日本製鐵事件をご紹介します。

新日本製鐵事件判決(最高裁平成15年4月18日)
【事案の概要】
被告の製鉄会社は経営状況の悪化を受け、製鉄所における構内輸送業務を協力会社のE運輸に委託することになった。構内輸送業務に従事していた原告は、E運輸への出向を命じられたが、同意しなかった。
【結論】
被告は出向命令を発令することができ、権利濫用にもあたらない。
【ポイント】
このケースでは、就業規則に「社外勤務をさせることがある」との規定がある上に、労働協約である社外勤務協定において、出向期間、出向中の地位、賃金、退職金、出向手当、査定等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられていました。そうした事情の下では、個々の同意を得なくても出向を命じることができると判断されています。

一般的にいえば、企業が出向を命じるためには、就業規則や労働協約における包括的な規定に加えて、各種条件について従業員に配慮した規定を整備している必要があると考えられます。
根拠となる明確なルールが設けられていれば、出向の時点で個々の同意を得なくとも出向命令の発令は可能です。

従業員の出向拒否に正当な理由があるとされるケース


弁護士
岡本 裕明
明確な根拠規定に基づいて会社が出向命令を出したときは、業務命令である以上、原則として従業員は従わなければなりません。ただし、そもそも出向の必要がない、人選に問題がある、労働条件が極端に悪化するといったケースでは、従業員は出向を拒否できます。

出向命令の有効性については、労働契約法14条に規定があります。

労働契約法14条
使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

出向命令が権利濫用とされるケースについて、以下で詳しくご説明します。

必要性がない

まず、出向の必要性がない場合には権利濫用として無効になります。

企業が出向させる目的は、関連会社の経営支援、人材交流、従業員のキャリア形成など様々考えられるでしょう。
「出向が絶対に必要」とまではいえないにしても、理由を説明できない出向は許されません。

人選が合理的でない

出向させる従業員の人選に問題がある場合にも無効となります。

たとえば、出向先での業務とまったく関係のない職種の従業員に出向を命じるようなケースです。
他に適任者がいるのにあえて出向させる背景に、会社批判への懲罰や退職に追いやるための嫌がらせといった目的が存在する場合もよくあります。
不当な目的で発令された出向命令は無効です。

なぜ当該従業員を出向させるのかについて、納得のいく説明ができなければなりません。

労働者にとって不利益が大きい

出向によって労働者が大きな不利益を被る場合にも無効とされる可能性があります。

たとえば、出向により、地位、労働時間、賃金などの条件が大幅に悪化するケースです。
また、勤務地の変更により単身赴任を強いられ、家族の介護が困難になるようなケースも不利益が大きいといえます。

「従業員への不利益が著しい」として無効とされないためには、手当の支給などの代替措置があるかもポインfトになります。

出向を拒否した従業員への対応


弁護士
岡本 裕明
出向命令が法的に有効であるときは、業務命令である以上、拒否する従業員には処分ができます。とはいえ、トラブルが大きくなるのを防ぐために十分な話し合いが必要です。いきなり解雇してはなりません。

出向を拒否した従業員への対応は以下を参考にしてください。

十分に話し合う

出向に難色を示した従業員に対しては、まずは十分に話し合いをして歩み寄れないか探るのがよいでしょう。
最初から強硬手段をとると、激しく反発されてしまいます。

出向を拒否するには理由があるはずです。キャリア・業務内容・労働条件に不安を抱えている場合もあれば、家庭事情により支障がある場合もあるでしょう。
会社に対する不満が背景にある可能性も考えられます。

出向が法的に有効なケースでは、会社運営に必要である点や従業員にとってのメリットもある点などを丁寧に説明して説得するようにしてください。
手当の支給など、代替措置をとることも説得材料になります。

懲戒処分をする

出向命令が法的に有効なものであれば、拒否は業務命令違反になります。
したがって懲戒処分も可能です。

懲戒処分をする際には、就業規則等のルールを確認したうえで、手続きを踏んで行うようにしてください。
解雇はハードルが高いため、降格、減給といった、より軽い処分から検討するとよいでしょう。

解雇は慎重に検討する

理論上は出向を拒否した従業員の解雇も可能です。
とはいえ、解雇は最終手段であり、特に慎重に検討しなければなりません

そもそも出向命令が無効であれば、解雇しても復職させたうえで未払い賃金の支払いが必要になります。
会社にとっては負担が大きく、社会的評価の低下も考えるとリスクが高いです。

たとえ出向命令が法的には有効なものであっても、軽い処分や退職勧奨など、より穏当な手段を検討しましょう。
退職勧奨に応じてもらえれば、トラブルが大きくなるリスクを下げられます。

参考記事:解雇とは?退職勧奨とは?両者の違いや注意すべき点を会社側弁護士が解説

出向を拒否されてお困りの方は弁護士にご相談ください


弁護士
岡本 裕明
出向の法的有効性は判断が難しい場合もあります。無理に社内で解決しようとせずに、お気軽に弁護士にご相談ください。

ここまで、出向の拒否について解説してきました。

根拠規定があるとしても、必要性がない、人選に問題がある、従業員に生じる不利益が大きいといったケースでは、出向命令が無効と判断されてしまいます。
拒否されたからといって解雇するのではなく、十分に話し合い、慎重に対応するようにしましょう。

出向拒否について疑問やお悩みがある方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください

当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。
ご相談いただければ法的に出向命令が有効かを判断し、拒否された際の対応もアドバイスいたします。
もちろん、既に紛争になっているときは労働審判や訴訟もお任せいただけます。

「出向を拒否された」とお困りの会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。

岡本裕明
記事の監修者
岡本裕明
弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士
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