「突然団体交渉を申し入れられたが、進め方がわからない」とお悩みではないですか?
団体交渉を求められたら、事前に組合側との調整や会社内部での調査・方針決定を行うなど、入念に準備しなければなりません。交渉当日も、相手のペースに飲まれないように、様々なポイントに注意が必要です。
今回は、事前準備から当日まで、団体交渉の進め方について解説しています。労働組合から団体交渉を申し入れられた企業の経営者や人事・労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
団体交渉が始まる際には、組合から「団体交渉申入書」「組合加入通知書」「要求書」といったタイトルの書面が送られてくる場合が多いです。わが国では、従来は企業内組合との交渉が一般的でしたが、近年は個人単位で加入できる合同労組(ユニオン)から突然申し入れがなされるケースが増えています。
知らない団体だとしても、労働組合からの申し入れであれば決して無視してはなりません。団体交渉の拒否は、原則として不当労働行為に該当し違法です(労働組合法7条2号)。申入書の内容を確認した上で、必ず回答しましょう。トラブル防止の観点から、回答は書面でするのが望ましいです。
団体交渉の拒否について詳しくは、以下の記事を参照してください。
参考記事:団体交渉は拒否できる?正当な理由が認められるケースも解説
交渉の日時を組合側と調整する必要があります。
会社側の都合や準備時間を踏まえて難しいのであれば、日時が申入書で指定されていたとしても従う義務はありません。とはいえ、数ヶ月後などあまりに先の日程を示すと団体交渉拒否とみなされかねないため、遠すぎない時期で候補日を示しましょう。
時間帯は、業務中の交渉を認めないために、所定労働時間外の時間を指定することなどが考えられます。また、長引きすぎるのを防ぐために、「2時間程度」など時間の目安を示しておくのがよいでしょう。
場所についても事前に交渉します。
日時と同様に、組合側に場所を指定されていたとしても、従う必要はありません。組合事務所でするように求められても、相手のペースに巻き込まれないために避けた方がよいでしょう。会社内で行う場合もありますが、他の従業員や取引先などの目に触れるリスクがあります。
そこで、外部の会議室の利用も検討してください。関係者に見られる心配がなく、貸し出し時間を理由に交渉を切り上げやすくなるメリットがあります。無用な争いを防ぐ観点から、費用は会社負担としましょう。
組合側が多数の組合員を動員して圧力をかけるケースがあるため、出席者の人数を制限しておくとよいでしょう。会社側・組合側それぞれ3名〜5名程度とするのが妥当です。
相手に示す必要はありませんが、社内で誰が出席するかも決めてください。組合側が要求していても、社長・代表者が出席する義務はありません。社長が事情に詳しくないときには、つけ入る隙を与えてしまいます。
とはいえ、権限のない人しか出席しないと、話し合いが進まず、不当労働行為とされるおそれがあります。事情に詳しく、一定の権限がある人を出席させましょう。弁護士の同席も可能です。
出席者だけでなく、発言者も事前に決めておきましょう。人によって言っていることが異なると組合側に突かれてしまうため、争点ごとに発言者は1人 とするのが望ましいです。
会社としての方針も事前に決めておきましょう。
方針を決める前提として、事実調査は不可欠です。組合の要求事項に応じて、関連する客観的な証拠を集め、関係者に事情を聞いておきます。
調査の結果をもとに、要求に応じるのか、どの程度までなら妥協できるのかなどを話し合います。方針を決める際には、裁判の場で争いになったときの見通しもつけておかなければなりません。見通しがわからないときには、弁護士に相談しましょう。
方針決定とともに想定問答集の作成もしておけば、当日スムーズに対応できます。
いくら準備していても、交渉中に予想外の事態に見舞われる可能性はあります。粘り強く対処して、相手のペースに飲まれないようにしてください。
たとえば、組合側が事前の要求にない点を議題にしてくるケースがあります。その場で言われたことについては「持ち帰って検討する」と回答して構いません。思いつきで答えると、後々問題になるリスクがあります。
他にも威圧的な言動をしてくる場合がありますが、ひるまないでください。怒号が飛ぶ、暴力を振るわれるなど、話し合いにならないケースもあるでしょう。そのときは、交渉を中断するのも選択肢になります。あくまで冷静に対応すべきであり、感情的になって対抗するのは避けてください。
交渉内容は必ず記録に残してください。次回以降の方針を決める手助けになるだけでなく、紛争になった際に証拠として活用できます。
方法としては、録音や議事録の作成が一般的です。録音については、事前に確認したうえで、双方で別々に行うのがよいでしょう。
組合側に要求されても、安易に約束はしないでください。特に書面にすると、いかなる名目であっても、「労働協約としての効力を持つ」と主張されるリスクがあります。組合側が作成した議事録へのサインも避けてください。
最終的な合意事項以外については、サインをせずにいったん持ち帰るようにしましょう。
交渉がまとまったら、後から蒸し返されるのを防ぐために、合意事項を書面にしてください。書面は労働協約となり、就業規則や個別の労働契約よりも強い効力を有します。
合同労組(ユニオン)から個々の労働者の残業代・解雇などについて交渉を求められていた際には、従業員本人の署名・押印も取り付けておきましょう。
会社側は団体交渉に応じる義務がありますが、要求に応じる義務まではありません。
団体交渉はあくまで話し合いです。繰り返し交渉を重ね、会社が主張の根拠を示しつつ話し合いをしていれば、最終的に合意に至らなくても不当労働行為にはなりません。互いの主張が平行線をたどってこう着状態であれば、打ち切りもやむを得ないでしょう。
話し合いを打ち切った後には、組合側がビラ配り・街宣活動といった行為に及んだり、労働委員会や裁判所の場での争いに持ち込んだりする事態が想定されます。
ここまで、団体交渉の進め方に関して、事前準備から当日まで注意すべきポイントを解説してきました。
労働組合から交渉の申し入れがあれば、決して無視してはなりません。事前に組合側との調整や会社内部での調査・方針決定を行ったうえで、当日は冷静に粘り強く対応するのが重要です。
団体交渉を申し入れられた際には、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。皆様に寄り添って、交渉の事前準備のポイントや見通しなど、様々な点につきアドバイスいたします。交渉当日の同席も可能です。
「団体交渉の進め方がわからない」「自分たちだけで組合と対峙するのは不安」といった方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。
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