「未払い残業代の付加金を請求された」「そもそも付加金とは何かわからない」とお困りでしょうか?
付加金とは、残業代などを支給していない会社に対して、ペナルティとして裁判所が支払いを命じる金銭です。付加金の支払いが命じられると会社の金銭負担が最大2倍になり、大きなダメージが生じます。
もっとも、実際に会社が付加金を支払うケースは稀です。事前交渉や労働審判の段階では支払う必要はありません。適切に対処していれば、過度に恐れる必要はないでしょう。
今回は、付加金の意味や請求された会社の対処法を解説しています。従業員とトラブルになり付加金の支払いを求められている企業の経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
付加金とは、残業代など、法律上支払いが要求されている金銭を未払いにしている会社に対して命じられるペナルティです。労働基準法114条に規定があります。
条文によると、裁判所は未払金に加えて同一額の付加金の支払いを命じることができます。すなわち、会社が負担する金額が最大で2倍になるということです。
付加金が規定されているのは、法令を遵守しない会社に制裁を課すためです。支払わないときのペナルティを用意することで、最初から払うように促す効果が期待できます。加えて、従業員の経済的損害を補てんするという意味もあります(最高裁平成27年5月19日決定)。
会社からすると、付加金は、残業代等を未払いにしているときに「倍返し」を強いられる制度です。
付加金と同様に判決時に支払いが命じられ得る金銭としては、遅延損害金があります。遅延損害金は、支払いが遅れたことに対する賠償金です。
遅延損害金は、未払い額と期間をもとに計算されます。利率は、在職中は法定利率である3%、退職後は14.6%です。判決までの期間が長ければ長いほど金額が膨らみます。付加金は未払い額をもとに決まるのであり、期間と直接の関係はありません。
また遅延損害金は、判決にまで至れば支払いが必要になります。付加金は、後述する通り、悪質なケースでしか支払いが命じられません。
なお、付加金に対しても、判決確定の翌日から遅延損害金が発生します(江東ダイハツ自動車事件・最高裁昭和50年7月17日判決)。
付加金の対象になる金銭は、以下の4つです。
● 解雇予告手当(労働基準法20条)
● 休業手当(労働基準法26条)
● 割増賃金(いわゆる残業代、労働基準法37条)
● 年次有給休暇中の賃金(労働基準法39条9項)
上記以外の賃金等に対しては、付加金は発生しません。
(参考記事)
・未払い残業代を請求されたら?リスクや対処法を弁護士が解説
・解雇予告手当とは?支払い時の注意点や計算方法を解説
付加金の請求期限は、労働基準法114条では「違反のあった時から5年」とされています。ただし、当面の間は3年となっています(労働基準法143条2項)。
3年経過すると、付加金は請求できません。請求された際には、未払いから時間が経っていないかに注意してください。
付加金支払いが命じられるのは、訴訟になって判決にまで至ったときだけです。当事者間の交渉や労働審判、あるいは訴訟になっても和解により判決前の段階で終了すれば付加金を支払う必要はありません。
トラブルになっても訴訟になって判決が出るまで争うケースはさほど多くないため、実際に裁判所が付加金支払いを命じ得るケースは限られます。
参考記事:労働審判とは?メリット・デメリットや訴訟との違いを解説
判決で未払いが認められたとしても、付加金の支払いまで命じるかは裁判所の裁量によります。実際には悪質なケースに限られます。
未払いがあったとしても、知識不足により法違反を認識していなかっただけで、指摘を受けて誠実に対応したようなケースでは、付加金の支払いは命じられないと考えられます。ただし、裁判所の裁量によるため、「○○の場合は付加金が発生する/しない」といった明確な線引きはできません。
裁判で判決が命じられるまでに会社が自発的に未払い分を支払えば、付加金を支払う必要はありません(細谷服装事件・最高裁昭和35年3月11日判決)。
加えて、1審で付加金の支払いを命じられたとしても、控訴審の審理が終わるとき(口頭弁論終結時)までに未払い分を支払えば、付加金は発生しません(甲野堂薬局事件・最高裁平成26年3月6日判決)。
残業代や解雇予告手当などを支払っているのであれば、未払いがないことを主張します。そもそも未払いがなければ付加金は発生しようがありません。全額を支払ったという証拠を示して反論しましょう。
未払い分があるようであれば、責任を認めて支払い、早期に解決する方が結果的によいケースが多いです。判決に至る前に話し合いがまとまれば、付加金は発生しません。
当事者間の交渉、労働審判、訴訟での和解などで解決すれば、付加金の負担を強いられないだけでなく、早めにトラブルから解放される点もメリットです。仮に合意できなかったとしても、真摯に支払いの姿勢を見せることにより、悪質ではないと判断され、判決で付加金が命じられにくくなるでしょう。
仮に1審で付加金支払いが命じられたとしても、控訴して控訴審の審理中に未払い分を支払えば、付加金までは発生しません。
もちろん、未払いの事実が存在していないのであれば、徹底的に争うのもひとつの方法です。とはいえ、1審で敗訴している以上、法的な支払い義務が生じている可能性が高いといえます。素直に責任を認め、会社の負担を少なくした方がよいかを検討しましょう。
ここまで、付加金の意味や請求された会社の対処法などを解説してきました。
付加金とは、残業代等を支払わない会社に対するペナルティです。判決になる前に解決すれば支払いは命じられません。早めに弁護士に相談し、方針を決めるのがよいでしょう。
付加金を請求された方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事労務担当者の皆様の味方です。ご依頼いただいた際には、未払いがないかを法的に判断したうえで、相手方との交渉や裁判所での手続きを徹底的にサポートいたします。
「付加金を請求された」とお困りの会社関係者の方は、お早めに弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。