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労働対策コラム

パワーハラスメント防止法の内容|パワハラ防止措置はどうする?

パワーハラスメント防止法の内容|パワハラ防止措置はどうする?

近年、職場でのいじめ・嫌がらせが深刻な社会問題とされるようになり、労働施策総合推進法が改正されました。法改正によりパワーハラスメントの定義や企業が防止措置をとるべきことが定められたため、通称「パワハラ防止法」と呼ばれています。2022年4月より中小企業にも適用が拡大されており、パワハラ防止のための対策は不可欠です。
今回は、パワハラ防止法の内容、企業がとるべきパワハラ防止措置などについて解説しています。パワハラ対策を検討している会社の経営者や人事・労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

パワーハラスメント(パワハラ)防止法とは?


弁護士
岡本 裕明
「パワハラ防止法」と呼ばれているのは、労働施策総合推進法です。労働施策総合推進法の改正によりパワハラに関する規定が盛り込まれたため、パワハラ防止法と呼ばれるようになっています。
まずは、パワハラについて法律で定められるに至った経緯をご紹介します。

従来、パワーハラスメントの定義や事業主が防止措置を講じる義務は、法律上規定されていませんでした。
しかし、法改正前の2017年度において、都道府県労働局や労働基準監督署に寄せられる民事上の個別労働紛争相談のうち「いじめ・嫌がらせ」に関するものが約7万2000件にものぼりました。相談件数全体のうち23.6%を占め最多であり、2008年度の約3万2000件(12%)と比べても急増している状況でした(参考:平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況|厚生労働省)。
パワハラ対策の必要性が高まる状況を背景に、労働施策総合推進法の改正が提案され、2019年5月に成立するに至ります。改正により、事業者がパワハラ防止措置をとることが義務づけられました。大企業は2020年6月から義務が課されていましたが、2022年4月より適用対象が中小企業に拡大されています。

パワーハラスメント防止法の主な内容


弁護士
岡本 裕明
パワハラ防止法の中でも特に知っておくべき内容は、パワハラの定義とパワハラ防止措置です。詳しく見ていきましょう。

パワハラの定義

パワハラ防止法では、パワハラの法律上の定義が示されました。

労働施策総合推進法30条の2第1項

事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

条文によると、職場において行われる、以下の要件をすべて満たした言動がパワハラに該当します。

①優越的な関係を背景としている
②業務上必要かつ相当な範囲を超えている
③労働者の就業環境が害される

順に詳しく見ていきます(以下参考:職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!|厚生労働省)。

優越的な関係を背景としている

「優越的な関係を背景とした」言動とは、被害者が抵抗・拒絶するのが難しい関係を背景にして行われるものをいいます。多くの方がイメージする通り、上司が部下に対してするのが典型例です。
ただし、同僚や部下からの行為であっても、拒否するのが困難な状況であればパワハラになり得ます。たとえば、部下の方が経験が豊富であり部下の協力がないと仕事が進まない状況であるのに嫌がらせをするケースや、部下が集団で上司にいじめをするケースです。

業務上必要かつ相当な範囲を超えている

「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」言動とは、社会常識から見て明らかに業務上必要のない行為、あるいは必要であっても方法が不適切な行為です。該当するかどうかは、行為の目的、経緯・状況、業務の内容・性質、関係性などを総合的に考慮して判断されます。
もちろん、相手に問題のある行為があれば、適切な方法で注意するのは構いません。しかし、人格否定や暴力など、度を過ぎた言動があればパワハラになります。

労働者の就業環境が害される

「労働者の就業環境が害される」とは、言動により身体的・精神的な苦痛を与えられ、業務の際に能力が発揮できないなど、見過ごせないほどの支障が生じることです。
就業環境が害されたかの判断は、平均的な労働者の感じ方を基準にします。したがって、行為をされた従業員が業務に支障が生じると感じたとしても、一般的な労働者が問題にしない行為であれば、パワハラには該当しない場合があります。

【2022年4月より中小企業にも適用】パワハラ防止措置
パワハラ防止法の中でもとりわけ重要なのが、事業者にパワハラ防止措置が義務づけられた点です。当初は大企業だけが適用対象でしたが、2022年4月から中小企業にも拡大されています。
詳細は厚生労働省が作成した指針に規定されていますが、ここではポイントをまとめました。

方針の周知

まずは、パワハラの内容やパワハラをしてはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発しなければなりません。具体的には、就業規則に規定して周知する、社内報に記載する、研修を実施するといった方法が考えられます。
加えて、パワハラをした従業員に対して厳正に対処する旨や対処の内容を、就業規則などに規定する必要があります。

相談体制の整備

労働者からの相談を受ける体制を会社が整備することも求められています。
たんに相談窓口を設置するだけでなく、窓口の存在を従業員に周知しておかなければなりません。社内に窓口を設置する以外に、弁護士など社外に相談できる体制を整える方法もあります。
社内に担当者を置いたときには、人事との連携、マニュアルの作成、担当者への研修などを通じて適切に対処できる体制を整える必要があります。

事後対応

パワハラの申し出があったときの事後対応も重要です。
被害を申し出た人だけでなく、加害者とされた従業員や第三者からも事実確認をする必要があります。
パワハラの事実が確認できたら、配置転換、メンタルヘルス相談など、被害者に配慮した対応をとらなければなりません。加害者に対しては、就業規則に沿って懲戒処分をします。場合によっては、加害者の配置転換や謝罪といった対応も必要です。
当事者への対応だけでなく、再発防止のために方針の周知徹底や研修なども行ってください。

パワーハラスメント防止法に違反したら?


弁護士
岡本 裕明
パワハラ防止法には、罰則は規定されていません。とはいえ、会社が被害者から損害賠償を請求される可能性はあります。社内環境を悪化させるパワハラを発生させないよう、防止措置を怠ってはなりません。

罰則はない

パワハラ防止法に違反しても、会社への罰則規定はありません。しかし、行政から助言、指導、勧告がなされる可能性があります。勧告に従わないときは、公表されるおそれもあります(33条)。

損害賠償を請求される

パワハラ防止法に罰則はありませんが、対策を怠った会社が被害者から損害賠償請求を受けるケースはあります。パワハラが発生すると、加害者だけでなく会社が金銭支払い義務を負うリスクもあるのです。
お金の問題だけでなく、パワハラは社内環境を悪化させ、大切な従業員を傷つける行為です。対策をとって防止するとともに、発生した場合にも適切に対処できるようにしておきましょう。

パワハラ防止対策は弁護士にご相談ください


弁護士
岡本 裕明
今やパワハラ対策は企業にとって不可欠になっています。具体的な対策にお悩みの方は、お気軽に弁護士にご相談ください。

ここまで、パワハラ防止法の内容を解説してきました。
パワハラ防止法では、企業にパワハラ防止措置をとるように義務づけています。現在は中小企業にも適用されており、従業員への周知徹底相談窓口の整備などが必要です。

パワハラ防止対策にお悩みの方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。相談窓口の設置をはじめとする体制整備だけでなく、パワハラ発生時の対応もお任せいただけます。
「パワハラをどう防げばいいかわからない」「発生したパワハラに対処できない」などとお困りの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

岡本裕明
記事の監修者
岡本裕明
弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士
■東京弁護士会
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