「どこからセクハラになるのかわからない」とお悩みでしょうか?
従業員から相談があった際には、事実確認をしてセクハラに該当するかを判断しなければなりません。
判断にあたっては、受けた側の感じ方が重視されるものの、客観性も考慮されます。
判断を誤ると対応も間違った方向に進んでしまうため、基準を把握するのは重要です。
今回は、セクハラの判断基準や裁判例、発生時の対応などを解説しています。
セクハラのボーダーラインがわからずお困りの会社経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
セクハラ・パワハラに関する基礎知識は、以下の記事でも解説しています。
参考記事:セクハラ・パワハラとは?会社が負う責任やとるべき対策を解説
そもそもセクハラとは、相手の意に反した性的な言動です。
職場におけるセクハラは、一般的に「対価型」「環境型」といった分類がなされます。
対価型とは、対応によって労働条件につき不利益を受けるタイプのセクハラです。
例としては、「性的行為を拒否したことを理由に解雇する」といったものが挙げられます。
環境型とは、性的な言動により職場環境が害されるタイプのセクハラです。
性的な会話、身体接触等により仕事に支障が生じるものをいいます。加害者にセクハラの意識が薄い点が特徴です。
セクハラは「男性から女性」というイメージがあるかもしれません。
しかし、「女性から男性」「男性から男性」「女性から女性」のいずれもセクハラになり得るので注意しましょう。
セクハラについての基礎知識は以下の記事でも解説しています。
参考記事:セクハラとは?定義・種類・会社がとるべき対策を解説
一般的な分類をご紹介しましたが、実際に起きるセクハラは千差万別です。
よりイメージしやすいように、セクハラの具体例を挙げました。
【性的な質問】
・「スリーサイズは?」
・「彼氏(彼女)いるの?」
・「今日は生理?」
【性的なからかい・冗談】
・「最近太った?」
・「今日はキレイだけどデート?」
・「俺と付き合ってみる?」
【性的な噂】
・「○○さん経験人数三桁らしいよ」
・「○○さんと××さん不倫してるんだって」
【身体接触】
・胸、尻、太ももなどを触る
・必要がないのに頭、肩、背中などに触れる
・腰に手を回す
【視覚によるもの】
・ヌード写真を掲示する
・わいせつな画像を見せる
・他の人に見えるようにアダルトサイトを閲覧する
【好意を持たれていると勘違いした言動】
・断られているのに執拗に食事やデートに誘う
・職務と関係のないメッセージを繰り返し送信する
【性別・年齢による差別意識に基づく言動】
・女性という理由でお茶くみや雑用をさせる
・宴会で晩酌を強要する
・「男のくせに根性がない」「女には仕事を任せられない」
・「もう30なら結婚か?」
・「おじさん(おばさん)」と呼ぶ
【性的指向や性自認に関する言動】
・「同性が恋愛対象なの?」と聞く
・「○○は同性愛者らしい」と噂を流す
上で挙げたのは比較的分かりやすい例ですが、セクハラかどうか判断が難しいケースもあるでしょう。
一般的な判断基準は「受けた側の意に反しており、業務に支障が生じるかどうか」です。
基本的には受け手の感じ方が重視されます。
もっとも、他の誰もがセクハラと感じないような言動について、受けた側の主張によりセクハラと認定されるのも妥当とはいえません。
そこで、一定の客観性も必要とされています。
受けた側が女性であれば「平均的な女性労働者の感じ方」、男性であれば「平均的な男性労働者の感じ方」を基準とするのが適当とされています(参考:職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です|厚生労働省)。
回数に関しては、胸を触られるなど、意に反する身体的接触により強い精神的苦痛が生じる場合には、1回でもセクハラです。
食事の誘いのように繰り返すことでセクハラになるようなケースでも、明確に抗議している場合や心身に重大な影響を受けることが明らかになる場合には、回数が少なくともセクハラになります。
セクハラになるかの判断が難しいときには、弁護士にご相談ください。
被害者が加害者に迎合的な態度をとったケースでもセクハラが成立するとした裁判例として、P大学(セクハラ)事件があります。
【事案の概要】
原告の大学教授(男性)は、同僚の女性准教授への身体接触等のセクハラを理由として減給処分を受けた。
問題となった行動は以下の通り。
・居酒屋で飲食している際に太ももに手を置いた(不快感を示されたのに繰り返した)
・年齢や婚姻の有無を尋ねた
・地下鉄車内で二の腕をつかんだ
原告は処分の無効を主張して大学を被告として提訴した。
【結論】
減給処分は有効。
【ポイント】
本件では、被害者が誘いに応じ最後まで同席した、同一のルートを通って帰宅した、お礼のメールを送信したといった事情がありました。
しかし、加害者との関係を考慮して機嫌を損ねないようにしたのであり、セクハラがなかったことを推認させる事情にはならないと判断されました。
この裁判例が示す通り、たとえ表面上加害者に迎合する(好意的に見える)態度があったとしても、セクハラになり得ます。
セクハラの相談がなされた際には、まずは事実調査が必要です。
事実がわからないとセクハラの有無を判断できず、適切な処分ができなくなってしまいます。
最低限必要なのは、当事者への事情聴取です。
被害を主張する従業員はもちろん、加害者とされた従業員の言い分も聴く必要があります。
プライバシー保護の観点から、被害者の同意を得たうえで加害者に事情を聴くようにしましょう。
当事者への事情聴取だけでなく、必要に応じて客観的な証拠の調査や第三者への聴き取りも行ってください。
事実が明らかになったら、前述の基準に沿ってセクハラに該当するかを判断します。
セクハラが認定されたときには、加害者への処分を検討しましょう。
懲戒処分には様々な段階があります。
セクハラの内容に応じて適切な処分をしなければなりません。
軽すぎる処分だと制裁にならない一方で、重すぎる処分をすると加害者から無効を主張されトラブルになるリスクがあります。
懲戒処分だけでなく、配置転換や謝罪など、適切な措置が必要です。
被害者へのケアも怠らないようにしましょう。
処分するだけでなく、再発防止策も不可欠です。
たとえば、懲戒処分を実施した旨を社内で公表する、セクハラに関する研修を実施するといった方法が挙げられます。
ここまで、セクハラの判断基準や発生時の対応などを解説してきました。
セクハラに該当するかは、受けた側の感じ方を重視しつつ、一定の客観性も加味して判断します。
従業員からセクハラの相談があった際には、事実調査、処分、再発防止を迅速に進めるようにしましょう。
セクハラかどうかの判断にお悩みの方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。
セクハラに該当するかの判断はもちろん、事後的な対応もお任せいただけます。
「どこからセクハラになるのかわからない」「セクハラの訴えにうまく対処できない」などとお困りの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。