「従業員に転籍を拒否された」とお困りではないですか?
転籍では雇用する会社が変わるため、従業員の同意が不可欠です。
転籍拒否を理由とした解雇や懲戒処分はできません。丁寧に説明し、決して強引に進めないようにしましょう。
今回は、転籍に関する判例や拒否された際の対応などを解説しています。
従業員の転籍を検討している会社経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
人事異動に関する一般的な知識は、以下の記事で解説しています。

転籍(転籍出向・移籍出向)とは、人事異動のうち、元の会社との雇用関係を終了し他の会社に籍を移して業務にあたらせるものです。
働く会社が変わらない配転や、会社に籍を残したまま行われる出向とは異なります。
転籍は、雇用契約の主体が変わるという大きな変更を伴います。
したがって、会社は転籍にあたって必ず従業員の同意を得なければなりません。
基本的に、個々の従業員に転籍時に同意してもらう必要があります。
従業員が拒否しているにもかかわらず、会社が「採用時にあらかじめ同意していたはずだ」「就業規則に転籍があり得る旨の規定が存在する」といった主張をして転籍を正当化しようとする場合もあります。
しかし、通常は拒否されたら転籍はさせられないとお考えください。
転籍の意味について詳しくは、以下の記事で解説しています。
参考記事:転籍とは?出向との違いや注意点を弁護士が解説

まずは、三和機材事件をご紹介します。
似た事例として、他の対象者が全員応じていた状況にもかかわらず、転籍には個々の労働者の同意が必要とされ、転籍拒否をした従業員の解雇は無効とされた裁判例があります(千代田化工建設事件判決・東京高裁平成5年3月31日)。
他の裁判例を見ても、転籍拒否に対する解雇等の処分は基本的に無効とされています。
例外的に転籍命令を有効とした事例が、日立精機事件です。
・入社案内に勤務場所のひとつとして明記されており、それを読んでいた
・「関連会社にも勤務できるか」という趣旨の質問に丸印をつけていた
・面接の際にも説明を受け異議がない旨の回答をした
このケースでは、転籍時の同意がなくても、転籍命令が有効とされています。もっとも、関連会社への転籍が社内配転と同様に長年実施されており、採用の際に転籍先まで同意していた点で特殊な事例です。安易に「自社でも転籍命令を出せる」と考えないようにしてください。
原則として、転籍時における個々の従業員の同意が必要です。
拒否された際には強引に進めないようにしてください。

転籍を拒否されたとしても、解雇や懲戒処分はできません。
転籍は強制できないところ、無効な命令に従わなかったに過ぎない場合には業務命令違反を理由に処分ができないためです。
転籍を拒否した従業員を無理やり解雇しても通常は無効です。
裁判所での争いになれば、復職させたうえで未払い賃金の支払いを強いられてしまいます。
金銭的負担だけでなく、会社の社会的なイメージが低下するリスクも高いです。
従業員は転籍を拒否できます。
配転や出向と同様に考えて対応しないようにしてください。
拒否の意向を示された際にできることとしては、丁寧な説得が挙げられます。
転籍の目的は様々です。
ケースによって、関連会社の経営・技術支援、人材交流、従業員のスキルアップ、雇用調整といった重要な目的が存在します。
会社にとって転籍が必要なのであれば、意義を十分に説明し、理解を得るように努力する必要があります。
あくまで説得である以上、強引に進めてはなりません。
転籍を強要しないように注意してください。
転籍ができない場合には、出向や配転を検討するのもひとつの方法です。
転籍と比べると法的なハードルが低いです。
転籍・出向・配転には以下の違いがあります。

とりわけ出向は転籍と似た目的で行われる場合も多く、有力な代替案になり得ます。
従業員に別の場所・組織・業務内容で働いてもらいたいのであれば、転籍以外でも実現できないか検討するとよいでしょう。

ここまで、転籍拒否について解説してきました。
たとえ就業規則に根拠規定があるとしても、転籍には個別の同意が必要です。
決して解雇等の強引な手段をとらず、慎重に解決策を検討するようにしましょう。
従業員の転籍拒否にお悩みの方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。
ご相談いただければ、そもそも当該事案が転籍に該当するかを判断したうえで、対処法をアドバイスいたします。
既に労働審判や訴訟に発展している際にも対応いたします。
「転籍を拒否された」「よい方法はないか」とお悩みの会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。