普通解雇とは、懲戒解雇以外の解雇です。
能力不足、病気・ケガなどで、従業員が会社の求める通りに業務ができないときに行われます。
しかし、法律上は普通解雇をするハードルは高いです。
会社が解雇を実行した後で無効とされれば、復職やバックペイの支払いを強いられてしまいます。
要件を満たしているか確認したうえで、慎重に進めなければなりません。
今回は、普通解雇について、懲戒解雇・整理解雇との違い、有効要件、進め方などを解説しています。
従業員の解雇を検討している会社の経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
解雇の一般的な知識は、以下の記事で解説しています。
参考記事:解雇とは?種類やできるケースを会社側弁護士が解説
普通解雇とは、懲戒解雇以外の解雇です。
主として従業員が労働契約上の義務を果たせない場合に実行されます。
具体的な理由は、能力不足、健康状態の不良、業務命令違反などです。
普通解雇が一般的な形態であり、多くの解雇は普通解雇に該当します。
懲戒解雇は、懲戒処分として行われる解雇です。
最も重い懲戒処分であり、死刑に例えられます。
職場での犯罪行為など、より重大な問題を引き起こした場合に科されるペナルティです。
普通解雇と懲戒解雇の主な違いは以下の通りです。
普通解雇 | 懲戒解雇 | |
解雇予告 | 必要 | 除外認定を受ければ不要 |
解雇理由の追加 | 可能 | 不可能 |
退職金 | 支払われる | 不支給・減額になる場合が多い |
失業手当 | 給付制限なし | 3ヶ月の給付制限 |
以上の他にも懲戒解雇をされると再就職の際に不利になるなど、普通解雇と比べて労働者に与えるダメージが大きいです。
そのため、法律上有効にできる場合は限られています。
なお、懲戒解雇できるケースであっても、会社の判断で普通解雇として構いません。
懲戒解雇について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
参考記事:懲戒解雇とは?普通解雇との違いや要件・注意点を解説
整理解雇とは、会社の経営上の理由でなされる解雇をいいます。
いわゆる「リストラ」をイメージしてください。
整理解雇は普通解雇の一種とされますが、会社側の事情でなされるため、区別して考える場合が多いです。
判例上、整理解雇の有効性は厳しく判断されます。
普通解雇では従業員に原因があるのに対して、整理解雇は会社側に原因がある点が大きな違いです。
参考記事:整理解雇とは?4要件や実施の流れを会社側弁護士が解説
普通解雇するメリットは、従業員の意思に関係なく、強制的に辞めさせられる点です。
同意を得る必要はないため、問題社員がもたらす悪影響を取り除くことができます。
デメリットは、法律上無効と判断されるリスクが高い点です。
後述する通り、解雇には法律上厳しい要件が課されています。
実行した後に争いになって無効とされれば、復職やバックペイの支払いを強いられてしまい、会社にとって大きなダメージとなります。
解雇の要件については、労働契約法16条に規定されています。
条文によると、普通解雇をするには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえる必要があります。
簡単に言えば、解雇できる理由があり、かつ解雇するほかないといえる場合に限って認められます。
労働契約法16条は、判例上形成されてきた「解雇権濫用法理」を明文化したものです。
代表的な判例として、高知放送事件があります。
一般的に考えられる解雇理由としては、以下が挙げられます。
これらの理由があったとしても、裁判所は様々な事情を考慮して簡単には解雇を認めない傾向にあります。
解雇できる理由について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
参考記事:解雇できる理由は?ケースごとのポイントを会社側弁護士が解説
そもそも法律上解雇が禁止されている場面もあります。
以上に該当するケースでは、決して解雇してはなりません。
特に、ケガ・病気の原因が仕事にないかには注意が必要です。
解雇は法的なハードルが高いため、あくまで最終手段です。
解雇の前に他の方法をとりましょう。
まずは、問題点について繰り返し注意指導を行います。
後で解雇の有効性が争いになる事態に備えて、記録をとっておくのも重要です。
注意指導をしても改善しなければ、懲戒処分が考えられます。
戒告・けん責といった軽い処分から減給・出勤停止・降格といった重い処分までありますが、ケースに応じて適切なものを選択しましょう。
段階的に厳しい処分にしていくのも効果的です。
注意指導や懲戒処分をしても効果が出なければ、解雇も視野に入ります。
ただし、解雇の前に退職勧奨を実施し、合意の上で辞めてもらう方が穏便に済ませやすいです。
話し合いによる説得を試みてください。
退職勧奨について詳しくは、以下の記事で解説しています。
参考記事:退職勧奨とは?解雇との違いやメリット・デメリットを解説
他の方法でうまくいかないときには、解雇を検討します。
法律上の要件を満たせそうだと判断した場合でも、手続きは踏むようにしましょう。
解雇の際には、30日以上前に予告するか、解雇予告手当を支払う必要があります(労働基準法20条)。
進め方を検討したうえで、解雇通知書を作成するなどの準備も進めてください。
解雇予告について詳しくは、以下の記事で解説しています。
参考記事:解雇予告手当とは?支払い時の注意点や計算方法を解説
解雇した後にも、退職に伴う手続きが必要です。
具体的には、離職票の作成、社会保険の手続き、退職金の支払いなどがあります。
普通解雇の場合には、退職金が支払われるのが通常です。
また、従業員から請求されたときには、解雇理由証明書を発行しなければなりません(労働基準法22条)。
解雇理由証明書については、以下の記事をお読みください。
参考記事:解雇理由証明書とは?何に使う?記載内容や注意点を弁護士が解説
ここまで、普通解雇について、意味や要件、進め方などを解説してきました。
普通解雇とは、懲戒解雇以外の解雇をいい、能力不足、ケガ・病気など、主に従業員が契約上求められる労務を提供できない場合に行われます。
客観的合理性・社会的相当性を備えていないと無効とされてしまうため、まずは他の方法をとるなど、慎重に進めなければなりません。
従業員を解雇したいと考えている方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。
ご相談いただければ、法律上解雇の要件を満たすか、先に他の方法をとるべきか、どう進めればいいかなどをアドバイスいたします。
もちろん、既にトラブルに発展している場合には迅速に対応します。
解雇に関してお悩みの会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。