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労働対策コラム

退職勧奨の理由になること|能力不足・病気の従業員に退職勧奨できる?

退職勧奨の理由になること|能力不足・病気の従業員に退職勧奨できる?

退職勧奨をする法律上のハードルは、解雇と比べると低いです。あくまでも従業員の意思による退職を誘う行為ですので、退職勧奨を行うにあたって厳格な要件は求められず、能力不足をはじめとして、様々な理由で退職勧奨ができます。もっとも、退職勧奨のやり方には注意が必要です。
今回は、退職勧奨の理由にできることは何かを解説しています。「従業員に辞めてもらいたい」とお考えの会社経営者や人事担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

退職勧奨にいたる理由の例


弁護士
岡本 裕明
退職勧奨とは、会社から従業員に対して、退職するように勧める行為です。直接規制する法律はなく、解雇と比べてハードルが低い点がメリットといえます。実際に、様々な理由で退職勧奨が行われています。

退職勧奨にいたる理由の例としては、以下が挙げられます。

  • 能力不足(ミスが多く改善しない、業務成績が著しく悪いなど)
  • 協調性がまったくない
  • 遅刻・欠勤を繰り返す
  • 業務命令に従わない
  • 他の従業員にハラスメントをする(セクハラ・パワハラなど)
  • 犯罪行為に及んだ(横領など)
  • 精神疾患に罹患し回復が難しい(うつ病など)
  • 会社の経営状況が悪化し人員削減の必要がある

このように、様々な理由で退職勧奨が可能です。今回は、能力不足、病気、会社の経営悪化を理由とした退職勧奨について詳しく解説します。

能力不足を理由に退職勧奨できる!


弁護士
岡本 裕明
企業の皆様からよくあるのが「能力不足の従業員を辞めさせたい」とのご相談です。たとえ能力不足でも、解雇はなかなか認められません。指導しても改善する気配がなければ、退職勧奨を検討することになります。

従業員を辞めさせる方法として、思いつきやすいのは解雇です。しかし、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当といえない限り、解雇は無効とされてしまいます(労働契約法16条 )。
解雇が認められるのは、著しく能力が不足していて指導しても改善せず会社に損害が生じる、特定の業務を任せるため中途で採用したのに能力がないなど、限られたケースです。ハードルは高く、単なる能力不足では解雇は困難といえます。
そこで有効なのが退職勧奨です。退職勧奨はあくまで説得であるため、基本的に自由に行えます。まずは指導が必要ですが、繰り返し指導しても改善が見込めず、配置転換も難しい従業員には、退職勧奨もご検討ください。
成績が悪い、ミスが多いなど、能力不足を理由とした退職勧奨は可能です。解雇が難しいケースだけでなく、解雇が可能なケースでも、穏便にすませるために有効な方法といえます。

病気を理由とした退職勧奨はできる?


弁護士
岡本 裕明
病気を理由とした退職勧奨も問題になります。とりわけ、うつ病をはじめとする精神疾患で長期間休んでいる従業員への対処法にお悩みの方は多いでしょう。病気が原因で業務ができない状態であれば、辞めさせることは可能です。もっとも、トラブルになって無効とされるリスクを考えると、退職勧奨をして合意の上で退職してもらうのがよいケースもあります。

病気の原因がプライベートにあるときは、業務ができない状態が続けば辞めさせることは可能です。休職制度があるときには、いったん休職してもらいましょう。所定の期間を過ぎても復職できない状態が続けば、就業規則の定めに従って自然退職または解雇する流れになります。ただし、復職できないか、配置転換により可能な仕事はないかなどを十分に検討してください。
業務が原因で病気になった際には、より慎重な対応が不可欠です。業務を原因とする病気であれば、療養期間とその後30日間は解雇できません労働基準法19条1項本文)。業務が原因で精神疾患に罹患していないかに注意してください。なお、業務が原因であっても、3年経過しても治らないときには、平均賃金の1200日分の打ち切り補償をすれば例外的に解雇が可能です(労働基準法19条1項ただし書、81条)。
いずれにしても、意思に反して会社を追われる結果となれば、従業員が反発する可能性があります。そこで、退職勧奨をしたうえで、納得して退職してもらうのも選択肢のひとつです。円満に辞めてもらえば、後でトラブルになるのを予防できます。
ただし、退職勧奨する際には方法に気をつけてください。強引に行えば違法と判断されるケースもあります。

エム・シー・アンド・ピー事件判決(京都地裁平成26年2月27日)

【事案の概要】

原告の従業員は、うつ病により休職した後、復職した。しかし、再び症状が悪化して業務ができない状態となったため、会社は5回にわたって退職勧奨の面談をした。医師の診断により再度休職となり、3ヶ月後に休職期間が満了したとして退職扱いにした。

【結論】

退職勧奨は不法行為に該当し違法。休職期間満了による退職も無効。

【ポイント】

会社が解雇の可能性を示唆した、従業員が応じない意思を示したのに繰り返し退職勧奨をした、業務量の調整に応じなかった、面談が2時間と長時間に及んだなどの理由で、退職勧奨が違法とされました。休職期間満了による退職も認められなかったのは、執拗な退職勧奨によりうつ病が悪化し、業務起因性があると判断されたためです。

病気を理由として従業員を辞めさせる際には、十分に注意して慎重に進めなければなりません。

会社の経営悪化による退職勧奨も可能


弁護士
岡本 裕明
会社の経営状態が悪化し、人員削減が必要になるケースもあります。状況にもよりますが、解雇よりも先に、ハードルが低い退職勧奨から行うのがよいでしょう。

経営不振を理由にした解雇(整理解雇)は会社の都合による解雇であるため、厳しく制限されています。一般的には、以下の4つの要件から有効性が判断されます。

  • 人員削減の必要性があるか
  • 解雇を回避するためにできるだけの努力をしたか
  • 対象者の人選は合理的であったか
  • 手続きは妥当だったか

整理解雇する際には、これらの要件をあらかじめ検討しておかなければなりません。
退職勧奨の場合には、あくまでも説得であり、合意の上での退職になります。したがって、整理解雇で要求される4要件を満たす必要はありません(ダイフク事件判決・大阪地裁平成12年9月8日)。もちろん事前に検討はすべきですが、解雇に比べてハードルは低くなります。

退職勧奨する理由があっても強引なやり方にならないように注意


弁護士
岡本 裕明
退職勧奨を行うにあたって、厳格な要件は必要となりません。もっとも、退職勧奨をする際にはやり方に注意しなければなりません。

たとえば、以下のケースでは退職勧奨が不法行為に該当し違法とされてしまいます。

  • 仕事を与えないなど嫌がらせをする
  • 拒否しているのに執拗に繰り返す
  • 侮辱的な発言をする
  • 「退職に応じなければ解雇される」と誤解させる

違法な退職勧奨をすると、損害賠償を請求されるなどのリスクがあります。あくまで説得であり、強引な手法で行ってはなりません

退職勧奨が違法になるケースについて詳しくは、以下の記事を参照してください。
参考記事:退職勧奨が違法になるケース|仕事を与えないなど強引な方法はNG!

退職勧奨できるかお悩みの方は弁護士にご相談ください


弁護士
岡本 裕明
退職勧奨をしてよいか、どう進めるべきかは個々の事情にもよります。少しでも悩み・疑問がある方は弁護士にご相談ください!

ここまで、退職勧奨ができる理由について、能力不足、病気、経営悪化のケースを中心に解説してきました。解雇と比べると、退職勧奨をする法律上のハードルは低いです。しかし、やり方に気をつけないと違法とされる可能性があります。理由を整理したうえで、強引に進めることのないよう注意してください。

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当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。退職勧奨できる理由はあるか検討したうえで、問題なくできる方法をアドバイスいたします。
「辞めさせたい従業員がいるが、本当に退職勧奨していいか不安」「退職勧奨をどう進めるべきかわからない」などとお悩みの会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。

岡本裕明
記事の監修者
岡本裕明
弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士
■東京弁護士会
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