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労働対策コラム

退職勧奨が違法になるケース|仕事を与えないなど強引な方法はNG!

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退職勧奨が違法になるケース|仕事を与えないなど強引な方法はNG!

退職勧奨とは、会社が従業員に対して、退職するように勧める行為をいいます。あくまで説得するだけであるため、解雇するよりも法律上のハードルが低いです。
とはいえ、仕事を与えない、執拗に繰り返すなど、過度な行為に及べば違法になり、損害賠償請求をはじめとするリスクが会社に生じます。退職勧奨が違法になるケースを知っておき、適法な範囲で実行するようにしましょう。
今回は、退職勧奨が違法になるケースや、違法と判断されたときのリスクなどを解説しています。「問題のある従業員に辞めてもらいたい」とお考えの会社経営者や人事担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

退職勧奨が違法になるかの判断基準


弁護士
岡本 裕明
退職勧奨を直接規制する法律はありません。基本的には会社が自由に行えます。ただし、強引な退職勧奨は民法上の不法行為に該当し、違法となる可能性があります。退職勧奨が適法か違法かを判断するにあたって、まずは裁判例で示された一般的な基準を知っておきましょう。

退職勧奨が不法行為として違法になるかの一般的な判断基準を示した裁判例として有名なのが、日本アイ・ビー・エム事件判決です。
同事件の1審判決で「労働者の自発的な退職意思を形成する本来の目的のために社会通念上相当と認められる限度を超えて、当該労働者に対して不当な心理的圧力を加えたり、又は、その名誉感情を不当に害するような言辞を用いたりすることによって、その自由な退職意思の形成を妨げる」ような退職勧奨行為は、不法行為として違法になるとの基準が示されました(東京地裁平成23年12月28日)。
説得として行う退職勧奨は、方法が適切であれば問題ありません。しかし、強引な手法によって退職を勧めれば、従業員が自由な意思決定をできなくなるため違法と判断されます。

退職勧奨が違法になるケース


弁護士
岡本 裕明
退職勧奨が違法と判断される代表的なケースとしては、以下が挙げられます。
・仕事を与えないなどの嫌がらせをした
・繰り返し、長時間にわたって退職勧奨がなされた
・従業員を侮辱する発言をした
・「退職に応じないと解雇される」と誤解させた
実際の判例を紹介しつつ、順に見ていきます。

仕事を与えないなど嫌がらせをする

退職させるために嫌がらせをすると、違法と判断される可能性があります。
例としては以下が挙げられます。
・到底不可能な分量の業務を課す
・仕事を与えない、意味のない仕事をさせる
・「追い出し部屋」に入れる
・無視する、孤立させる
・暴力を伴ういじめをする

具体的な事例としては、エール・フランス事件があります。

エール・フランス事件判決(東京高裁平成8年3月27日)

【事案の概要】

会社再建のための希望退職に応じなかった従業員に対し、暴行を伴ういじめ、無意味な仕事の割り当てなどの嫌がらせがなされた。

【結論】

違法な退職勧奨として、実行者と会社の双方に損害賠償の支払いが命じられた。

従業員を精神的に追い詰めて、退職せざるを得ない状態にするのは違法です。退職勧奨として違法なだけでなく、パワハラにも該当するので絶対に避けてください。

執拗に退職勧奨を繰り返す

多数回、長時間にわたって退職勧奨をすると違法になる可能性があります。

下関商業高校事件判決(最高裁昭和55年7月10日

【事案の概要】

教員であった原告に対して、数ヶ月間で十数回の退職勧奨をした。1回あたりの時間は、長いときで2時間以上であった。

【結論】

教育委員会に損害賠償の支払いが命じられた。

現実には、1度では退職に応じてくれないケースも多いです。繰り返し行っただけでは違法になりませんが、拒否する姿勢を明確にしているのに執拗に繰り返すと不法行為と判断されてしまいます。退職勧奨はあくまで説得にすぎず、強制はできない点を忘れないでください。

侮辱する

退職勧奨の際に従業員を侮辱する行為は、名誉感情(自尊心)を傷つけるため違法です。

兵庫県商工会連合会事件判決(神戸地裁姫路支部平成24年10月29日)

【事案の概要】

退職勧奨の際に「自分で行き先を探してこい」「管理職の構想から外れている」「ラーメン屋でもしたらどうや」などの発言があった。

【結論】

不法行為が成立するとして、退職勧奨をした担当者と会社に損害賠償の支払いが命じられた。

退職勧奨は、従業員の人格や自尊心を否定するために行うものではありません。相手に問題があったとしても、冷静に伝えるよう心がけ、伝え方には細心の注意を払うようにしましょう。

解雇されると誤解させる

実際には解雇できるだけの理由がないのに、退職勧奨を通じて「退職に応じないと解雇される」と従業員に思わせるのもいけません。解雇されると信じて退職に応じたとしても、意思表示に間違いがあったとして無効や取消しになってしまいます。

富士ゼロックス事件判決(東京地裁平成23年3月30日)

【事案の概要】

勤務時間や交通費について虚偽の申告をした従業員に対して、人事担当者が「職を辞して懲戒解雇を避けたいのか、手続きを進めるのか」などと言った。自主退職しなければ懲戒解雇されると信じた従業員は、退職願を提出した。

【結論】

懲戒解雇ができるケースではなく、退職の意思表示は錯誤により無効であるとして、復職とそれまでの期間の賃金支払いを会社に命じた。

解雇するハードルは、多くのケースで会社が考えているより高いです。解雇の要件を満たしていないときに「退職しないと解雇される」と思い込ませたとしても、結局退職の意思表示の効力が否定されてしまいます。復職だけでなくさかのぼって賃金を支払う必要も生じ、会社にとっては大きなダメージです。「退職しないと解雇する」と安易に伝えてはなりません

違法な退職勧奨をしたときのリスク


弁護士
岡本 裕明
違法な退職勧奨をすると、損害賠償を請求されるほか、復職とともに未払い賃金の支払いを命じられるケースもあります。「違法行為をするブラック企業だ」との評判が広まるリスクも否定できません。

損害賠償を請求される

違法な退職勧奨をすると民法上の不法行為に該当し、精神的な苦痛に対する慰謝料が発生します。
金額としては、数十万円から100万円程度のケースが多いです。ただし、悪質なケースでは100万円を超える損害賠償が認められる可能性もあります。

退職の意思表示が効力を失い賃金支払いを命じられる

損害賠償を請求される以外に、退職の意思表示の効力が否定されるリスクもあります。
「退職する」との意思表示が効力を失うと雇用が続いている状態になるため、復職が可能になってしまいます。どうしても復職させたくないときには、多額の解決金が必要になるでしょう。
復職に応じるだけでなく、それまでの賃金も支払わなければなりません。争いが長引いていれば、1000万円単位の支払いを強いられるケースもあります。
無理やり退職させたとしても、後から会社が大きな金銭的負担を強いられる可能性があるのです。

会社の社会的評価が下がる

違法な退職勧奨をすると、当該従業員と争いになるだけでなく、会社の社会的評価が下がるおそれもあります。
現代はSNSなどを通じて簡単に情報が拡散する時代です。違法行為が明るみになれば、すぐに「ブラック企業」とのレッテルを貼られてしまうでしょう。採用しようにも応募が集まりづらくなる、従業員のモチベーションが低下するといったリスクがあります。

違法な退職勧奨をしないために弁護士にご相談ください


弁護士
岡本 裕明
退職勧奨が違法か適法かの区別が難しいケースも多いです。行為の前後を問わず、弁護士に相談して見解を聞いてみるのをオススメします。

ここまで、退職勧奨が違法になるケースやリスクについて、判例を紹介しつつ解説してきました。
仕事を与えない、執拗に繰り返す、侮辱するといった内容の退職勧奨をすると違法です。損害賠償を請求されるだけでなく、退職の効力が失われたり、企業としての信用が下がってしまったりするリスクがあります。強引な退職勧奨は避けましょう。

退職勧奨を考えているときには、弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。退職勧奨の正しいやり方を事前にアドバイスするとともに、行為に及んで従業員と既に争いになっているケースでも徹底的にサポートいたします。
「退職させたい従業員がいる」「退職勧奨が違法だと主張されている」などとお悩みの会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください

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岡本裕明
記事の監修者
岡本裕明
弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士
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