会社の労働問題・労務問題にお困りなら
お気軽にご相談ください

※企業様の抱える労務問題に特化したサイトになりますので、従業員様(被用者様)側の御相談はお断りさせていただいております。
労働対策コラム

解雇理由証明書とは?何に使う?記載内容や注意点を弁護士が解説

キーワード:  

解雇理由証明書とは、解雇した理由を労働者に示す際に発行する書類です。従業員から請求されたら、会社は必ず発行しなければなりません
解雇理由証明書を請求してくるときは、解雇の有効性を争おうとしている可能性があります。記載内容が重要になるので、考えられる解雇理由を漏らさず記入しましょう。
今回は、解雇理由証明書に関して、意義や記載内容、注意点を解説しています。従業員から解雇理由証明書の交付を請求された会社経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
解雇に関する基礎知識は、以下の記事で解説しています。

参考記事:解雇とは?種類やできるケースを会社側弁護士が解説

解雇理由証明書とは?何に使う?


弁護士
岡本 裕明
解雇理由証明書とは、その名の通り、従業員を解雇した理由を証明する書類です。従業員から請求された会社には、法律上作成・交付する義務があります。退職証明書と呼ばれる書類もありますが、解雇の場面では似た役割を果たします。
解雇理由証明書の発行を迫られている場面では、紛争に発展するリスクが高いです。あまり馴染みがないかもしれませんが、先を見すえると重要な書類といえます。
まずは、解雇理由証明書の意義・役割や退職証明書との違いを解説します。

解雇した理由を証明する書類

解雇理由証明書とは、解雇の理由を証明するために、会社が労働者に対し交付する書類です。労働基準法22条2項に定めがあります。

労働基準法22条2項
労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

解雇理由証明書は、従業員に解雇予告した日から退職日までの間に請求された場合に、会社が作成する書類です。請求された会社には作成・交付する法的義務が生じ、違反に対しては「30万円以下の罰金」というペナルティも用意されています(労働基準法120条1号)。
もっとも、請求されない限り交付義務はありません。解雇予告後に別の理由で退職した際にも不要です。なお、2年を経過すると時効により労働者からの請求権が消滅します(労働基準法115条)。
解雇予告について詳しくは、以下の記事をお読みください。

参考記事:解雇予告手当とは?支払い時の注意点や計算方法を解説

退職証明書との違い

似た書類に退職証明書があります。根拠条文は労働基準法22条1項です。

労働基準法22条1項
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

退職証明書は、解雇に限らず、退職した場合に発行される書類です。解雇の場合には解雇理由も含むため、解雇理由証明書と同様の役割を果たします。
解雇の場面での大きな違いは、退職証明書は退職日(解雇日)より後に請求された際に発行するのに対して、解雇理由証明書は解雇予告日から解雇日までの間に請求された際に発行する点です。解雇予告手当を支払って即時解雇した際には、退職証明書が請求されます。
記載内容については、退職証明書では解雇理由以外も含まれる点が異なります。
根拠条文、請求時期、記載事項は異なりますが、解雇の場面では両者は似た役割を果たす書面です。以下では、特に区別せずにまとめて「解雇理由証明書」として扱います。

紛争の際に証拠になる

解雇理由証明書は、解雇した理由を示す役割を果たします。特に重要なのが、訴訟や労働審判の場では記載された理由が重要な意味を持つ点です。
法律上、解雇は「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」であると認められない限り無効です(労働契約法16条)。裁判所での争いになった際には、解雇理由証明書に書かれた理由の是非が中心的な問題となります。したがって、不適切な内容だと会社に不利な判断が下されるリスクが高まります。
解雇理由証明書を請求された時点で、従業員が争おうと考えている可能性があると認識し、証拠になると想定して作成するようにしましょう。

解雇理由証明書に記載すべき内容


弁護士
岡本 裕明
裁判の場で証拠になることを想定すると、解雇理由は具体的かつ網羅的に書くのが重要です。記載のポイントをご説明します。

解雇理由を具体的に書く

解雇理由は具体的に記載してください。「能力不足」「勤務成績不良」といった抽象的な内容ではいけません。問題としている行為を特定し、事実関係を詳しく記入しましょう。
事実関係だけでなく、根拠となった就業規則の条項内容もあわせて記載します。厚生労働省が示しているモデル書式(Word形式)も参考にしてください。
解雇できる理由について詳しくは、以下の記事で解説しています。

参考記事:解雇できる理由は?ケースごとのポイントを会社側弁護士が解説

考えられる理由はすべて書く

考えられる解雇理由は証明書にすべて記入してください。裁判所での争いになった段階で理由を追加するのは望ましくないです。
特に懲戒解雇の場合には、理由の追加はできません。普通解雇であれば追加は一応可能とされますが、当初記載していなかった理由は裁判所に重視されないおそれがあります。
解雇理由は漏らさずに記入するのが重要です。ただし、十分な証拠がないものまで記載すると従業員の反発を招いたり、裁判所の心証を悪くしたりするので避けてください。

請求されていない事項は記入しない

労働者が請求していない事項は記入しないでください(労働基準法22条3項)。特に退職後に請求される退職証明書には法律上様々な記載事項が定められていますが、求められた点だけ記載しましょう。

解雇理由証明書に関する注意点


弁護士
岡本 裕明
ここまで紹介してきた点以外にも、解雇理由証明書に関して注意すべきポイントが存在します。以下の点も頭に入れておきましょう。

早めに作成・交付する

法律上は、請求されたら「遅滞なく」交付しなければなりません。即日交付する必要まではありませんが、時間をかけすぎるのは厳禁です。1〜2週間以内に発行しましょう。

事前に解雇理由を吟味する

請求された段階で慌てて記載する理由を検討すると、不適切な内容となってしまうおそれがあります。解雇する段階で明確にしておきましょう
そもそも、我が国では解雇の法的ハードルは非常に高いです。本当に解雇までできる理由があるのか、あらかじめ入念に検討しなければなりません。
事前の検討が不十分だとトラブルになるリスクが高いです。すぐに弁護士にご相談ください

解雇理由証明書の作成は弁護士にご相談ください


弁護士
岡本 裕明
解雇理由証明書を請求されたときは、紛争に発展するおそれがあります。お早めに弁護士にご相談ください。

ここまで、解雇理由証明書について、意義や記載内容、注意点を解説してきました。
解雇理由証明書の交付を請求されているケースでは、(元)従業員が争いたいと考えている可能性があります。考えられる理由をすべて、具体的に記入し、トラブルに備えなければなりません。

解雇理由証明書についてお悩みの方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。ご相談いただければ、証明書の記載内容、今後の対応などについてアドバイスいたします。
解雇する(した)従業員から証明書を請求されてお困りの会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。

岡本裕明
記事の監修者
岡本裕明
弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士
■東京弁護士会
様々な業務分野の顧問先企業様に対して法務問題だけに限らないサービスを提供させていただいております。コンプライアンスの問題については、研修の講師を担当してきた他、社内の不正調査等についても豊富な経験を有しており、英文契約書等のチェック等も対応可能です。

企業労務に関するお悩みは、お電話かメールフォームにて受付けております

企業様の抱える労務問題に特化したサイトになりますので、
従業員様(被用者様)側の御相談はお断りさせていただいております。
初回相談(20分まで)は無料です。お気軽にご相談ください。
※お電話での電話相談は利益相反等の確認ができない場合には対応出来かねることもございますので、予めご了承ください。
※メールフォームからのお問合せの場合、返信にお時間を要します。お急ぎの方はお電話にてご連絡ください。