懲戒解雇を実施する際には、手続きを踏むのが重要です。
手続きが不十分だと、後から解雇が無効とされ、バックペイの支払いを強いられてしまいます。事実調査、就業規則の確認、弁明の機会の付与、解雇通知といった流れを経るようにしてください。
今回は、懲戒解雇の手続きの流れや注意点を解説しています。懲戒解雇を検討している会社経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
解雇についての基礎知識は、以下の記事で解説しています。
参考記事:解雇とは?退職勧奨とは?両者の違いや注意すべき点を会社側弁護士が解説

懲戒解雇は、従業員としての身分を奪う、重大な処分です。重い処分を科す以上、間違いがあってはなりません。事前に証拠を集め、就業規則の規定を確認したうえで、弁明の機会を与えるなど、慎重に進める必要があります。
実際に、弁明の機会を与えていないことを指摘し、懲戒解雇を無効とした裁判例も存在します(日本ボクシングコミッション事件・東京地裁平成27年1月23日など)。
懲戒解雇が無効とされると、復職させたうえで、解雇後の賃金(バックペイ)を支払わなければなりません。手続きを軽視しないようにしてください。
参考記事:懲戒解雇とは?普通解雇との違いや要件・注意点を解説

まずは、事実調査をして証拠を集めなければなりません。誤った判断を防ぐとともに、後で争いになった際に懲戒解雇できる理由があることを証明できるようにするためです。
調査方法や集めるべき証拠はケースバイケースです。勤怠管理の記録、メールの履歴など、様々考えられます。周囲の従業員へのヒアリングが必要な場合もあります。
ただし、警察のように強制的な調査ができるわけではありません。従業員のプライバシー侵害などの問題が生じないように注意してください。
就業規則の規定の確認も不可欠です。
懲戒解雇するには、就業規則に懲戒解雇という処分が明記されていることや、記載された懲戒理由に該当していることが要件となります。懲戒解雇処分が規定されていない、懲戒理由のどれにも当てはまらないといったケースでは、懲戒解雇はできません。
また、懲戒処分の手続きがルール化されている場合もあります。懲戒委員会の開催、労働組合の意見聴取といった手続きが定められているときには、必ず守るようにしてください。
参考記事:就業規則とは?効力や記載事項、作成・変更方法を弁護士が解説
懲戒解雇の理由があると確認できたとしても、必ず従業員に弁明の機会を与えるようにしてください。
従業員に反論の機会を与えることは、正当な手続きといえるか判断する際に重要なポイントです。従業員側に酌むべき事情があれば、解雇できない可能性もあります。
正確な判断を下すとともに、後から無効とされないために、従業員に言い分を主張するチャンスを与えなければなりません。
懲戒解雇すると決めたら、懲戒解雇通知書を作成しましょう。
解雇通知書には、懲戒解雇することだけでなく、解雇理由や就業規則の根拠条文、解雇日なども記載します。
なお、基本的に懲戒解雇の理由は後から追加できません(山口観光事件判決・最高裁平成8年9月26日)。理由はすべて記載するようにしてください。
一般的に、解雇の際には、30日以上前に予告するか、解雇予告手当を支払わなければなりません(労働基準法20条)。
もっとも、労働者の責任に帰すべき理由に基づいて解雇するときには、解雇予告は不要です(労働基準法20条1項ただし書)。ただし、事前に労働基準監督署の除外認定を受ける必要があります(労働基準法20条3項・19条2項)。除外認定の手続きの手間や要する時間を考慮して、あえて解雇予告を行うケースも多いです。
いずれにしても、解雇は確実に相手に通知してください。懲戒解雇通知書を手渡しする際には、証拠としてコピーをとり、受領のサインをもらうようにしましょう。直接会えず郵送する際には、内容証明郵便や特定記録郵便により、通知した事実と内容を証明できるようにしておく必要があります。
参考記事:解雇予告手当とは?支払い時の注意点や計算方法を解説
懲戒解雇の際にも、退職に伴う手続きは必要です。離職票の発行、社会保険からの脱退、源泉徴収票の交付などを行ってください。
従業員から請求された際には、解雇理由証明書を交付しなければなりません(労働基準法22条)。
参考記事:解雇理由証明書とは?何に使う?記載内容や注意点を弁護士が解説

解雇する前に、必ず証拠を揃えるようにしてください。誤った処分を防ぐとともに、争いになった際に解雇の正当性を証明できるようにするためです。
無断欠勤であれば勤怠記録、業務命令違反であれば命令内容と反応、ハラスメントであれば被害者や同僚の証言など、懲戒の理由によって証拠は異なります。解雇する以前にした注意指導の記録も証拠となるため、残しておくようにしましょう。
証拠が揃った後で、従業員に弁明の機会を与えるのも忘れないでください。
懲戒対象となる事実を確認できたとしても、解雇までしていいかは十分な検討を要します。
懲戒解雇は、従業員としての身分を奪う、非常に重い処分です。ハードルは他の懲戒処分と比べて高いです。
懲戒理由に対して重すぎる処分をすると、無効となってしまいます。一発で懲戒解雇できるのは、社内での不正行為や重大な経歴詐称など、特に問題の大きい行為に限られます。注意指導や軽い懲戒処分により様子を見るのが適切なケースが多いです。
参考記事:懲戒解雇の理由になること・ならないこと|注意点を弁護士が解説
懲戒解雇をした後には、公表する場合もあります。
もっとも、公表する目的は、他の従業員の意識を高め、再発を防ぐことです。見せしめとして氏名まで公表してしまうと、名誉毀損に該当するおそれがあります。ハラスメントなど被害者がいるときには、被害者のプライバシーへの配慮も必要です。
通常は、社内向けに最低限の事実を公表すれば十分でしょう。必要以上の情報を公表しないようにしてください。

ここまで、懲戒解雇の手続きについて解説してきました。
無効とされないために、懲戒解雇では手続きを踏まなければなりません。事実調査、就業規則の確認、弁明の機会の付与、解雇通知などを確実に行うようにしましょう。
従業員の懲戒解雇を検討している方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。ご相談いただければ、懲戒解雇できるか、どう進めればいいかなどをアドバイスいたします。もちろん、既にトラブルに発展している場合には迅速に対応します。
懲戒解雇の進め方にお悩みの会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。