懲戒解雇は最も重い懲戒処分であり、相当の理由が必要です。単に従業員に問題があるというだけでなく、重大な問題でなければなりません。
懲戒解雇できる理由の例としては、長期の無断欠勤、重大な経歴詐称、社内での犯罪などが挙げられます。もっとも、実際に懲戒解雇できるかはケースバイケースです。
今回は、懲戒理由になること・ならないことを、具体例に触れつつ解説しています。問題のある従業員を懲戒解雇していいかお悩みの会社経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
解雇についての基礎知識は、以下の記事で解説しています。
参考記事:解雇とは?退職勧奨とは?両者の違いや注意すべき点を会社側弁護士が解説

参考記事:懲戒解雇とは?普通解雇との違いや要件・注意点を解説
配転・出向命令違反、残業命令違反など、業務命令違反を理由に懲戒解雇できる場合があります。
もっとも、業務命令違反については、そもそも命令が正当なものであるかが問題です。正当な命令であるとしても、会社への影響や従業員側の事情を考慮して、解雇は重すぎると判断されるケースもあります。いきなり解雇せずに、注意指導や軽い懲戒処分をするのが適切な場合が多いです。
長期の無断欠勤も懲戒解雇の理由になります。期間としては2週間以上が目安です。
ただし、ハラスメント被害や精神疾患などが原因で欠勤している可能性があります。安易に解雇すると無効とされかねません。
たとえば、「精神疾患に罹患した従業員に対しては、精神科医による健康診断や治療を勧めて休職等の処分を検討すべき」として諭旨退職処分を無効としたケースがあります(日本ヒューレット・パッカード事件判決・最高裁平成24年4月27日)。
参考記事:無断欠勤で解雇できる日数は?流れ・注意点を弁護士が解説
経歴詐称も懲戒解雇の理由になり得るものの、事前に知っていれば採用しなかったといえるような、重大な経歴詐称に限られます。
経歴には、学歴だけでなく、職歴や犯罪歴も含まれます。学歴については、高く申告する場合のみならず、低く申告するのも経歴詐称です。
たとえば、中卒・高卒者を募集対象としていたときに、大学中退を高卒と偽っていたケースで、懲戒解雇が有効とされました(岸研精工事件判決・最高裁平成3年9月19日)。
セクハラ・パワハラをした従業員の懲戒解雇も可能です。もっとも、犯罪に該当するレベルのものを除いて、いきなり解雇するのは難しいです。
たとえば、女性従業員の手を握る、性的な発言を繰り返すなどしていたものの、強制わいせつ罪に該当するような行為はなかった事案では、懲戒解雇は無効とされています(Y社セクハラ事件判決・東京地裁平成21年4月24日)。
懲戒解雇をする前段階で、ハラスメントに対する注意指導や軽い懲戒処分をしておくと、解雇の有効性が認められやすくなります。
参考記事:セクハラ・パワハラとは?会社が負う責任やとるべき対策を解説
社内で不正行為や犯罪をした場合には、懲戒解雇が認められやすいです。
たとえば、経理担当社員による横領、バス運転手の運賃抜き取りなどでは、懲戒解雇が有効とされる場合が多いです。他にも、会社物品の窃盗、出張費や手当の不正受給、社内暴力などが挙げられます。
社内での犯罪行為については厳しい処分が認められやすいものの、あくまでケースバイケースです。従業員の立場や悪質性などにより、懲戒解雇まではできない場合もあります。
プライベートでの犯罪も、処分の理由になり得ます。もっとも、会社に影響を与えない場合も多く、社内での犯罪と比べると、懲戒解雇は認められづらいです。
懲戒解雇できる可能性があるのは、事業に直接関係するものや、企業の社会的評価を傷つけるようなものに限られます。たとえば、鉄道会社の従業員が痴漢したケースや、トラックドライバーがプライベートで飲酒運転をしたケースなどです。

懲戒解雇できるのは、企業秩序を著しく乱すものに限られます。
懲戒解雇の理由になりづらいこととしては、たとえば以下が挙げられます。
これらについては、通常は懲戒解雇はできず、普通解雇の対象になり得るに過ぎません。普通解雇もハードルは高いため、慎重に進めるべきです。
参考記事:普通解雇とは?懲戒解雇との違いや要件・進め方を解説

懲戒解雇するには、前提として、就業規則に明記されている必要があります。懲戒解雇という処分が規定されていない場合や、規定された処分理由に該当しない場合には、懲戒解雇はできません。
また、行為の後で就業規則に懲戒事由を追加しても、過去にさかのぼって適用することはできません。
参考記事:就業規則とは?効力や記載事項、作成・変更方法を弁護士が解説
懲戒解雇した後で、別の理由を追加して処分理由として主張することはできません。理由の後出しはできないということです。
たとえば、業務命令違反を理由として解雇した後で、年齢詐称を処分理由に追加することは許されないとされました(山口観光事件判決・最高裁平成8年9月26日)。
既に処分した行為で再び処分することはできません(平和自動車交通事件・東京地裁平成10年2月6日判決)。二重の処罰になってしまうためです。
ただし、過去の処分歴を考慮するのは構いません。「以前に懲戒処分をしたのに繰り返した」として重い処分を正当化することは許されます。
また、長期間経過した行為を処分理由としてはなりません。たとえば、7年以上前の暴行事件を理由とした諭旨退職処分は無効と判断されました(ネスレ日本事件・最高裁平成18年10月6日判決)。
懲戒解雇で特に気をつけるべきなのは、解雇までしてよいかという点です。
懲戒解雇は、従業員としての身分を奪う、大変重い処分です。相当な理由が必要になります。
解雇が無効とされると、復職させたうえで、解雇後の未払い賃金(バックペイ)の支払いを強いられます。社内での犯罪行為のような深刻なケースを除き、まずは注意指導や軽い懲戒処分をするのが適切な場合が多いです。

ここまで、懲戒解雇できる理由や注意点などを解説してきました。
長期の無断欠勤、重大な経歴詐称、社内での犯罪などは、懲戒解雇の理由になり得ます。もっとも、懲戒解雇のハードルは高く、無効になるリスクが高いです。慎重に検討するようにしましょう。
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