問題社員に退職勧奨に応じてもらうのは簡単ではありません。従業員の側には、辞めさせようとしていることへの反発はもちろん、経済的な不安も生じます。
退職に際しての経済的な不安を和らげるために有効なのが、退職金の上乗せや解決金の支払いです。金銭の支払いによって、退職を受け入れてくれる可能性が高まります。
問題がある社員にお金を渡すのには、抵抗があるかもしれません。しかし、退職に応じてくれずに解雇せざるを得なくなると、無効と判断されたときに莫大な金銭支払いが生じるリスクがあります。相場を踏まえて妥当な退職金・解決金の支払いにより円満に辞めてもらう方が、結果的に会社にとってもメリットが大きいです。
今回は、退職勧奨における退職金・解決金について、相場や上乗せしないリスク、交渉のポイントなどを解説しています。辞めさせたい従業員がいる会社の経営者や人事・労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
そもそも退職勧奨とは、会社が従業員に対して退職するよう勧める行為です。合意により円満に辞めてもらえる、解雇に比べて法律上のハードルが低いといったメリットがあるため、解雇する前の段階で検討します。
ただし、従業員に納得してもらうのはなかなか難しいです。心理的に受け入れられないのはもちろんですが、現実問題として収入がなくなると生活が行き詰ってしまいます。
そこで考えられるのが、退職金の上乗せや解決金の支払いです。通常の退職金を規程に沿って支払うだけでなく、プラスして金銭を支給すれば、経済的な不安がある程度和らぎます。
退職金がない会社でも「解決金」として支払う場合があります。名目が「退職金」であろうと「解決金」であろうと、退職と引き換えに支払う金銭である点は変わりません。
退職金の上乗せや解決金の支払いは、退職に応じてもらいやすくする意味を持ちます。
即時解雇する際には、30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。(労働基準法20条)。解雇予告手当を下回る金額では、従業員から見て退職に応じる金銭的メリットがありません。
解雇の際に解雇予告手当を受け取れる事実は、調べればすぐにわかります。提示されたのが月給1ヶ月分よりも少ない金額であれば、従業員としては「解雇予告手当の方がマシ」と考えるでしょう。話し合いが難航しているときに辞める決意をさせるには、最低でも月給1ヶ月分を超える金額でなければなりません。
解雇予告手当については、以下の記事で詳しく解説しています。
参考記事:解雇予告手当とは?支払い時の注意点や計算方法を解説
経済的な不安を和らげるためには、再就職までにかかると想定される期間分の生活費を支払うのがよいでしょう。
統計によると、再就職までの期間は平均で3〜4ヶ月程度です(参考:ユースフル労働統計p.84|労働政策研究・研修機構)。もちろん個人差はありますが、月給3〜4ヶ月分のお金を渡せば、生活費をまかなえる可能性が高まります。
たしかに退職後には失業保険の受給が可能です。とはいえ、金額は少なく、実際に受け取るまでにタイムラグがあります。従業員としては、退職の際にお金を受け取った方が安心です。
再就職までにかかるであろう期間は、支給額を決めるにあたって頭に入れておくべき要素といえます。
従業員としては「有給を買い取ってもらいたい」と考えている可能性があります。有給が残っているときには、有給の日数を退職金・解決金の金額に反映させてもよいでしょう。
退職に応じるにしても「残っている有給を使いたい」と考えるはずです。使わせるか買い取るかは従業員の意向にもよりますが、扱いをはっきりさせておきましょう。
金銭的メリットがないと、従業員が退職に応じてくれない可能性が高まります。
元々辞めさせたいと考えているのは、当該従業員に何らかの問題があるからです。これまで十分な指導をしても改善していないのであれば、問題を取り除くには退職させるほかありません。いつまでも会社に残っていると、他の従業員のモチベーションにまで悪影響を与えるおそれがあります。
他の優秀な従業員がいなくなるリスクを考えると、問題社員の退職のためにある程度の出費をする方が、結果的に会社にとってはよいでしょう。
退職に応じてくれないときには、最終手段として解雇を選択せざるを得ません。しかし、法律上解雇するハードルは高いです(労働契約法16条)。解雇した後に争われ、裁判所に無効と判断されるおそれがあります。
解雇が無効とされると、復職させたうえで、未払い賃金を支払わなければなりません。裁判中の交渉で辞めることに応じてもらえたとしても、高額の支出を強いられます。争う期間が長くなればなるほど、最終的な出費も膨らみます。裁判所での争いが激化すると、金銭面だけでなく会社の業務上も負担が大きいです。
解雇が無効とされて多額の未払い賃金を支払わせられるのであれば、最初から退職金に多少の上乗せをした方が結果的に得だといえます。
退職金上乗せや解決金の交渉をする際には、従業員に根拠やメリットを示すのが重要です。
ただ「給料〇ヶ月分」と提示しても、「もっと出してくれ」と言われかねません。「再就職のための期間を考慮した」「残っている有給を買い取るとすれば」などと根拠を示せば、納得を得やすくなります。
様子を見て「会社に居続けるよりも新たな環境の方が活躍できる」「当面の生活費はあるからじっくり今後について考えられる」などと伝えるのも効果的です。
もちろん、理由を示しても「もっとお金を出して欲しい」と言われる可能性はあります。会社として妥協できる範囲を決めておき、金額を釣り上げられるのを防ぐようにしましょう。
ここまで、退職勧奨における退職金の上乗せや解決金の支払いについて解説してきました。
金銭の支払いにより、従業員に退職を決断させられるケースはしばしばあります。もちろん必須ではありませんが、支払いを拒否した結果、退職に応じてくれない可能性が想定されます。相場を踏まえつつ、個々の事情に応じて、支払うか否か、金額をどうするかを決定しましょう。
退職勧奨を考えているときには、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。ご相談いただければ、どの程度の金銭支払いが妥当かも含め、退職勧奨の正しいやり方を事前にアドバイスいたします。
「退職させたい従業員にいくら支払うべきか」とお悩みの会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。
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