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労働対策コラム

退職勧奨で言ってはいけないこと|言ったときのリスクも解説

退職勧奨で言ってはいけないこと|言ったときのリスクも解説

問題社員に辞めてもらいたいときには、解雇よりも先に退職勧奨を検討するべきです。説得して退職に応じてもらうのは、解雇に比べて法律上のリスクが低いといえるからです。
とはいえ、退職勧奨で何を言ってもいいわけではありません。辞めてもらいたいとの思いが強すぎるあまり、説得の際に言ってはいけないことを言ってしまうケースがあります。
たとえば、侮辱的な発言「退職に応じないと解雇しかない」と誤解させる発言はしてはなりません。言ってはいけないことを言うと、結局辞めさせられなかったり、多額の金銭支払いを強いられたりするリスクがあります。
今回は、退職勧奨で言ってはいけないことや、言ったときのリスクについて解説しています。社内に辞めてもらいたい従業員がいる会社の経営者や人事労務担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

退職勧奨で言ってはいけないこと


弁護士
岡本 裕明
退職勧奨においては、人格否定やハラスメントになる発言をしてはなりません。「退職しなければ解雇する」といった発言も慎んでください。
退職勧奨はあくまで説得です。従業員を傷つけたり、無理やり辞めさせたりしてはいけません。辞めさせたい思いが強すぎて不適切な発言をすることのないように、細心の注意を払ってください。

退職勧奨を適法に進めるには、発言内容以外の態度や方法も重要です。他の要素も含めて、退職勧奨が違法になるケースについて以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参照してください。
参考記事:退職勧奨が違法になるケース|仕事を与えないなど強引な方法はNG!
人格を否定する・侮辱する言葉
従業員の人格を否定したり、侮辱したりする言葉は発しないでください。相手が反発して退職に応じてもらうのが難しくなったり、精神疾患に罹患してしまったりするおそれがあります。当たり前の話に聞こえるかもしれませんが、そのような理由で退職勧奨が違法なものと認められてしまうケースは珍しい訳ではありません。
たとえば、以下の言葉は絶対に避けましょう。
・会社に不要な人間だ。居場所はない。
・無能は今すぐ辞めてくれ。
・みんなに嫌われているぞ。
発言そのものが不法行為に該当し、慰謝料が発生すると判断されたケースもあります。

兵庫県商工会連合会事件判決(神戸地裁姫路支部平成24年10月29日)
【事案の概要】
退職勧奨の際に「自分で行き先を探してこい」「管理職の構想から外れている」「ラーメン屋でもしたらどうや」などの発言があった。
【結論】
不法行為が成立するとして、退職勧奨をした担当者と会社に慰謝料の支払いが命じられた。

退職勧奨は、辞めさせたい相手を傷つけるための行為ではありません。たしかに業務上の問題点を指摘する必要はありますが、相手の心情に配慮しつつ行うようにしてください。問題となった事実や会社がした努力を冷静に伝えるのが望ましいです。

ハラスメントにあたる発言

パワハラ、セクハラ、マタハラなど、ハラスメントになる発言もしてはなりません不法行為として損害賠償が発生するだけでなく、退職の意思表示の効力が否定される可能性もあります。
上述した人格否定発言は、「精神的な攻撃」としてパワハラに該当すると考えられます。他には、たとえば「産休をとるなら退職して欲しい」と言えばマタハラです。
日常業務だけでなく退職勧奨の場においても、ハラスメントになる発言をしないよう細心の注意を払ってください。

「退職に応じないと解雇する」

退職に応じない場合には解雇する旨を示唆する発言も避けましょう
会社が解雇したいと考えていたとしても、実際に解雇するための法律上のハードルは高いです。本来は解雇できないのに、他の選択肢がないと考えて従業員が退職していれば、退職の意思表示の効力が失われるおそれがあります。
たとえば、以下の発言は控えてください。
・退職しないのなら懲戒解雇する。
・いずれにせよ会社には残れない。
・言わなくてもどうなるかわかりますよね。
退職が無効とされた判例をご紹介します。

昭和電線電纜事件判決(横浜地裁川崎支部平成16年5月28日)
【事案の概要】
退職勧奨に際して会社が「自分から退職する意思がないということであれば解雇の手続をすることになる」などと説明した。従業員は、解雇を避けるには自ら退職する以外に方法がないと考えて、退職に応じた。
【結論】
解雇できる理由はなく、従業員は錯誤に陥っていたとして、退職を無効とした。復職と未払い賃金の支払いが命じられた。

解雇だけでなく、退職に応じないときの不利益を示唆する発言は慎むようにしてください。無理矢理辞めさせたと評価されるような発言は許されないのです。

退職勧奨で言ってはいけないことを言うリスク


弁護士
岡本 裕明
ひとたび不適切な発言をすると、従業員が反発して退職に応じてもらうのが難しくなる可能性があります。たとえ強引に退職させても、後から無効を主張されるリスクが高いです。加えて、発言そのものが不法行為だと判断されれば慰謝料が発生してしまいます。
これらのリスクについて、順に見ていきましょう。

退職してもらえない

いくら業務上問題があるといっても、従業員もひとりの人間です。人格否定や侮辱をされると、従業員が反発して態度を硬化させ、退職に応じてもらえないケースがあります。特に自分のミスや欠点を認めないタイプの問題社員だと、不適切な発言をすれば反感を買いやすいでしょう。
辞めてもらうための説得であるのに、かえって退職が遠のいてしまえば本末転倒です。納得してもらうために業務上の問題点を指摘する必要はありますが、あくまで客観的事実や会社がした努力の説明にとどめてください。

退職の意思表示が効力を失う

「退職しなければ解雇する」との発言を従業員が信じて退職に合意したとしても、後から効力を失う可能性があります。民法上の錯誤や詐欺に該当すれば、退職の意思表示を取り消せるためです。
退職の効果がなくなれば、雇用状態が継続している形になります。裁判所からは、復職やそれまでの賃金の支払いを命じられます。
問題社員の復職が認められれば、会社や他の従業員へのマイナスの影響が大きいです。未払い賃金は、年収や争いの期間によっては1000万円を超えるケースもあります。その間、問題社員を勤務させていない訳ですから、何も働いていない社員に給料相当額を払わなくてはいけなくなるのです。
無理やり退職させると、最終的に会社が代償を払う結果となってしまうのです。

慰謝料を請求される

従業員を心理的に追い詰めたり、名誉感情を傷つけたりする発言をすれば、民法上の不法行為に該当します。そのため、従業員が受けた精神的苦痛に対して慰謝料が発生します。
金額は数十万円から100万円程度のケースが多いです。給料相当額を超える損害を賠償しなくてはいけない可能性すらある訳です。
また、金銭的負担はもちろんですが、SNS等で情報が拡散されれば、会社の社会的信用を低下させるリスクもあります。

退職勧奨で言ってはいけない発言を避けるためには弁護士にご相談ください


弁護士
岡本 裕明
退職させたいとの思いが強いと、つい不適切な発言をしてしまいがちです。リスクを避けるには、事前に弁護士に相談し、適切な伝え方を聞いておくのがよいでしょう。

ここまで、退職勧奨で言ってはいけないことについて解説してきました。
人格否定やハラスメントに該当する発言や、解雇を示唆する発言はしてはなりません。反発されて退職してもらえない、退職しても後から効力を否定される、金銭支払いを強いられるといったリスクがあります。
あらかじめ伝え方を十分に検討し、問題のある発言をしないよう細心の注意を払わなければなりません。
人格否定やハラスメントが許されないことは十分に把握できていると思われるかもしれませんが、会社の一員であった社員を辞めさせる交渉になる訳ですから、双方に感情的になってしまい、人格否定やハラスメントに繋がってしまうことは大いにあり得るのです。

退職勧奨を考えているときには、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください
当事務所は、会社の経営者や人事担当者の皆様の味方です。ご相談いただければ、言ってはいけないことはもちろん、退職勧奨の正しいやり方を事前にアドバイスいたします。
「退職させたい従業員がいるが言い方がわからない」とお悩みの会社関係者の方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。

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岡本裕明
記事の監修者
岡本裕明
弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士
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